#393 H25産「さぬきの夢」生産量は5,382t
先日小麦の集まりがあったので行って参りました。色々お話はありましたが、やはり気になったのは今年(H25)の「さぬきの夢」の作柄でした。結論から言うと、収量は5,382tの豊作で、これは過去5年間の中で最高の出来でした。小麦に限りませんが、収量が多いということは、品質も良いということです。実際今年の1等麦比率は92.7%と、ほとんどが高品質ですので、かなり期待していただいて良いと思います。
今年が豊作になったのは主に2つの理由があります。一番大きな理由は、何といっても天候に恵まれたことです。1月から2月中旬にかけては、低温・夏雨であったために生育が遅れましたが、2~3月は、天候も回復し平年並みの生育となり、出穂期以降の4月下旬においては、高温で推移し好天に恵まれました。そして何といっても、梅雨入りが平年より遅れたため、収穫前の好天に恵まれたことが何といっても、一番の理由です。11月に播種してから6月の収穫までに約7ヶ月あるわけですが、この中で最も小麦の品質に影響するのは、やはり収穫前の1ヶ月です。
収量が多かったもう一つの理由は、小麦の銘柄が全量「さぬきの夢2000」から「さぬきの夢2009」に移行したことです。さぬきの小麦は3年間かけて、前品種の「さぬきの夢2000」から「さぬきの夢2009」に切り替わり、今年からは全量、「さぬきの夢2009」になりました。「さぬきの夢2009」は「さぬきの夢2000」に比べ、かなり穂が長いので、それだけ反収も多くなります(#285)。これは農家にとっても生産意欲の向上につながりますので、大変結構なことです。
しかし今後順調に生産量が伸びるかといえばそうでもありません。H25産の作付面積は1,550ha、そして計画では来年の作付面積は15%アップの1,780haで、予定生産量は5,874tです。もしそれが実現すれば、私たち実需者が望んでいる希望数量8,000tに一歩近づきます。しかし実際はそんなに簡単ではありません。(#346)に香川県の過去の生産量の推移がありますが、これをみると8,000tという数字が如何に大変か、おわかりいただけると思います。過去にはS36に54,000tという夢のような数字もありましたが、近年は5,000tを超えるのがやっとです。
ではなぜ作付面積が増えないのか?その最大の理由は、小麦価格が魅力的でないからです。お米同様、日本での穀物生産コストは非常に高く、小麦の場合、アメリカやオーストラリアと比較して、7~10倍もかかっています。この生産コストの差は、一言で言うと耕作面積の違いです。日本は狭小な土地が多いので、とにかく手間がかかるのです。今年のさぬきの作付面積は1,550haといいましたが、これはオーストラリアなら1戸の農家の耕作面積です。しかもこれだけの面積の畑がひと続きになっているので、生産コストがとっても低いのです。
よってなにもしないでいると、競争力がない国産穀物は、たちまち消滅してしまいますが、現在は補助金によってかろうじて生きながらえている状態です。しかしその補助金の額が、たちまち耕作面積増加につながるほどは、多くありません。補助金の原資は、結局のところ税金ですから、国民の皆さんが広く薄く負担していることになります。全くの大まかな計算ではありますが、現在の補助金の額は、うどん1玉当り20円くらいになります。これを高いと思う方もいれば、安いと思う人もいるでしょう。
よって大勢の人が、「この補助金は高すぎる」と思い始めると、除々に補助金は減り始め、やがて国産小麦は消滅することになります。そして一旦なくなってしまうと、今後は多分耕作されることは、なくなると思います。よって食料自給率との関連性も含めて、国産小麦は今度どうするかという議論は慎重にする必要があります。今度、おうどんを啜るときには、1杯あたり20円の負担額は高いか、安いか、是非お考えになってみてください。