#397 小麦は食べるな!(WHEAT BELLY)
先日、「小麦は食べるな!」という衝撃的な本を発見し、思わず買ってしまいました。ビミョーな内容だけに、どうしようと迷いましたが、結局ご紹介することにしました。著者はアメリカウィスコンシン州のミルウォーキーで予防循環器科の医師をされているデービス先生です。原題はウイートベリー(WHEAT BELLY)、つまりパンやケーキなど小麦粉食品を食べ過ぎて、ぽっこりと膨れ上がったお腹のことを言います。それが、邦題になると「小麦を食べるな!」と一気に過激になります。とりあえずひと通りざっと目を通してみて、その中で気になった5項目を書き出してみました。また独断ではありますが、私の思うところも説明させていただきました。
①小麦が、肥満や諸病の原因である。
確かに現在のアメリカ社会では、肥満が大きな問題になっているのは事実です。空港でもショッピングモールでも、かなりの肥満が目につきます。それも私たちが普段目にしている肥満とは次元の異なる、それこそビール樽がそのまま歩いているような光景も珍しくありません。アメリカの人たちは確かに多くの小麦粉食品を食べてはいますが、原因はそれだけではありません。つまり実際には、小麦粉だけを食べることはまずありません。パンやクッキーといった小麦粉製品には、砂糖、バター、塩、油脂などが沢山入っていますが、こちらの方の影響が大きいと思います。日本でも、肥満、糖尿病が社会問題になっていますが、これは私たちの食生活の変化(#345)を見れば、お米の減った分、そのままお肉や油脂類に代わったことが主因であることが推測できます。
②小麦の摂取をやめればほとんどの病気は治る。
肥満に由来する病気は沢山あるので、食事制限をして肥満が解消されたら、健康的になるという話は理解できます。しかし文中にある「小麦をやめたらシワがなくなり、白内障も治った!」というのはどうもしっくりきません。白内障は加齢とともに水晶体が濁る病気ですが、一旦濁った水晶体は元の透明な状態に戻す方法はなく、白内障手術は、人工眼内レンズと交換するのが唯一の方法であると聞いています。
③小麦には依存性があり、最強の「食欲増進剤」である。
これは確かに事実かもしれません。パン、ピザ、うどん、ケーキと小麦粉製品はとにかく美味しいことに相違ありません。ですから私たちはできるだけ食べ過ぎには注意するべきです。特に加齢とともに新陳代謝は低下するので、尚更注意が必要です。「うどんは別腹」といっていくらでも食べることができるので、うどんベリー(うどん腹)にならないように気をつけましょう。「うどんは太る」という一部の主張を否定するためにも、私たち業界人は毎日うどんを食べても、太らないという事実を、自身の身体をもって証明しなければなりません。
④現在の小麦品種は、「品種改良」により100年前の小麦とは、全く別物である。
品種改良は小麦に限らず、全ての農作物で行われています。しかし本の表紙に書かれてある「遺伝子組み換えの恐怖」という表現は事実に当てはまりません。というのはGMO(遺伝子組み換え)小麦は、市場には流通していないからです。また本文中で「緑の革命」でノーベル平和賞を受賞されたノーマン・ボーローグ博士が中傷されているのは残念でなりません。
⑤小麦粉だけでなく、全粒粉、米、トウモロコシ、豆類、グルテンフリー食品など糖質を含んでいる食品は全てよくない。
デービス先生は、小麦粉だけでなく、炭水化物を含んでいる食品は全て摂取するべきではないと主張されていますが、これはいくらなんでもちょっと行き過ぎだと、個人的には思います。そういえば以前アトキンス博士が低糖質ダイエットを提唱され、自ら実践されていましたが、転倒が原因でお亡くなりになりました。何れにしても一般的な常識でいえば、たんぱく質、炭水化物、脂質の3大栄養素をバランスよく摂取することが何より重要だと思います。