#411 うどんテイスティング・・・家庭用自動製麺機その①

f411技術革新により高性能のホームベーカリー(HBもしくは自動パン焼き機)が低価格で商品化され、今ではどこでもお手軽に焼きたてパンが楽しめるようになりました。一方、うどんの方はHBのように世間に認知されているポピュラーな家庭用自動製麺機は、まだ登場していません。業務用であれば、300万円くらいでオールインワン式製麺機、つまり①混合②捏練(①+②=混捏)③熟成④圧延⑤切断までを一つの機械で行えるものがありますが、これも各工程間は、手動操作が必要なので、全自動というわけではありません。

手打ちうどんと手捏ねパンの製法を比較すると、パンの方が発酵に伴う温度管理がややこしいので、難しいと思います。うどん生地の熟成はけっこう雑にやっても大抵はうまくいきますが、パンの方は膨れなくなるので、きめ細かく温度管理する必要があります。しかし最近のHBはその面倒な温度管理を全てコンピュータがやってくれるので、タイマーさえセットすればいつでも好きな時間に、ほかほかのパンが焼き上がります。では「パンにはHBがあるのに、なぜうどんには家庭用自動製麺機がないのか?」といった素朴な疑問がわきます。

通常の手打ちうどんの工程(上記①~⑤)を、HBのようなコンパクトな筐体の中で収めようとすると、①~③はなんとか処理できても、④圧延工程と⑤切断工程が難しくなります。常識的に考えて、箱の中にロール機やカッターを仕込むことができないからです。よって包丁切り方式のうどんは実現が難しく、唯一可能な方法はエクストルーダー方式(押出機)になります。これは簡単にいうとトコロテンを押し出すようなイメージで、パスタは全てエクストルーダーによって製造されています。

つまりコンパクトな全自動製麺機となると、ミキサーとエクストルーダーの組合せが、多分唯一の選択肢であろうと思います。そして先日ある業界新聞にこの手の製麺機が紹介されていたので、ついつい購入してしまいました。内部は一見、ピンタイプのミキサーのようですが、出口の方にエクストルーダーが装着され、どちらも共通の軸で連結されています。「撹拌」ボタンを押すとミキサー部分が回転し、小麦粉と塩水を混合させ、この工程は5分程で終了します。次に「麺出」ボタンを押すと、今度は軸がゆっくりと逆回転を始め、右の押出機の方に生地を集め、そこからゆっくりエクストルーダーで麺を排出する仕組みです(この辺りの仕組みは非常に巧妙にできています)。

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うどんの基本配合は以下の通りです。食用油を3gいれるのはうどんの原材料としては不思議な気もしますが、撹拌もしくは麺の排出をスムーズにするためのものだと推測します。またこの配合だと塩水濃度は6%程度とかなり低く(通常は10~13%)、また加水率は34%と通常の手打ちうどんの45~50%に比べるとかなり低くなっています。尚、「全自動」ボタンを押すと、「撹拌」に引き続き「麺出」が行われ、容器内の生地が少なくなると自動停止します。この基本配合で製麺時間はおよそ12分と極めて短時間です。

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撹拌工程

【うどんの基本配合】
小麦粉:250g
塩:5g
オリーブオイルもしくはサラダ油:小さじ1(3g)
水:77g

エクストルーダーの先端のアタッチメントは交換式で、麺の用途に応じて長方形、丸穴(大)、丸穴(小)、マカロニタイプと4種類が選択可能になっています。うどんの場合、長方形を選択すると下の画像のようにうどんが押し出されてでてきます。押出機によるうどんなので、包丁切りうどんとは、当然食感は異なりますが、この辺りについては次回詳しく説明いたします。

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押出工程