#414 水回しに適した各種混合機
手打ちうどんの作業手順は単純明快ですが、実際にそれを機械化するのは、簡単ではありません。(#411)で試した最新の家庭用製麺機は確かに巧妙にはできていますが、課題もいくつかあります。そもそも全ての工程をオールインワンの機械でやるのは、ハードルが高過ぎるので、ここではひとつ最初の「水回し工程(混合)」に絞って考えてみたいと思います。水回しとは、最初の作業工程で、小麦粉と塩水を均一に混ぜあわせ、塩水を小麦粉の隅々まで行き渡らせることが目的です。
水回しは、それが終了した時点で、小麦粉がそぼろ状態になっていれば完璧です。そして気温が低いときには、更にこの状態で暫く放置してやると、塩水が隅々まで浸透し、水回しが更に完璧なものとなります(そぼろ熟成)。元々、小麦粉と水とは相性が余り良くなく(#292)、寒い時は特に混ざりにくいので、そぼろ熟成を行うことによって、水回しが完全なものとなります。逆に水回しを飛ばして、いきなり固めてしまうと生地の中で、水が自由に動けなくなり、水分分布にむらができてしまいます。すると水が少ないところは、いくら捏ねてもグルテンが充分に発生しないので、うどんのコシが不十分となり、また食味も良くありません。
このように水回しは、手打ちうどんにおいては最も重要な工程ですが、実際には軽視されることも少なくありません。つまりそぼろ状態を経ずに、いきなり生地にまとめてしまう方法ですが、このように軽視される理由は、きっと水回しをやってもやらなくても、生地にまとめてしまうと同じに見えるからであろうと思います。よって生地だけ見ても、水回しの良し悪しは判断できませんが、重要な工程なので、できるだけ丁寧にすることがコシと風味のあるうどんにつながります。さて前置きが長くなりましたが、この水回し工程を、市販の機械でどこまでできるか、試してみました。
①電動餅つき機
餅つき機は、中心部分に小さな羽根が付いていて、これがクルクル回ります。最初に小麦粉を入れておき、スイッチを入れると同時に、塩水を少しずつ落とします。羽根の形状と回転速度からいうとミキサー(混合機)なのかニーダー(捏ね機)なのかよくわかりませんが、まずまずの出来に仕上がります。回転速度が高速でないので、均一なそぼろという訳にはいきませんが、充分なレベルにまで仕上がります。
岡山県のうどん愛好家Oさんは、このそぼろ状態の生地を手でまとめて、暫く熟成させ、再度餅つき機に投入し、練り工程(足踏み)まで、この餅つき機でやってしまいます。Oさんによれば、餅つき機だけで充分に美味しいうどんが搗きあがります。ただこうしてできたうどんは、ソフトで美味しいのですが、稀に切れやすいことがあるそうです(その理由は、グルテンの立体網目構造が不十分なためと考えます)。よって少し足踏み工程を追加してやれば完全なうどんができあがる筈です。
②菓子用ミキサー
これはカステラやケーキの生地をつくるときに使用するミキサーです。このミキサーの回転速度は、餅つき機に比べるとかなり速く、500g~1kg程度の小麦粉であればほんの数十秒で完璧なそぼろ状態にまで仕上げることができます。いくつか試した市販のミキサーでは、これが一番理想的な水回しができます。唯一の難点は、価格が若干高めなので、「水回し」だけの目的で、菓子用ミキサーを購入するのは、少し勿体無いような気もします。ただ菓子用ミキサーも千差万別なので、中にはコストパフォマンスに優れたものもある筈です。
純手打ちのうどん屋さんというのは、現在ではほとんど見かけませんが、何百人分ものうどんを全て手作業で行うのは実に重労働です。特に水回しを完璧に行おうとすれば、時間、体力、そして根気が必要です。よって部分的に機械を導入することによって、完璧な作業が行えるのであれば、それはそれで良いことだと、個人的には思います。実際、手延そうめんの製造工程においても、現在では各工程毎に機械が導入され、それによって生産量もアップし、品質も安定するようになりました。