#417 小麦と小麦粉のまとめ
#415では中力粉でうどんを打ち、#416そして強力粉でパンを焼きましたが、それぞれ特等粉と1等粉を使用しました。そこでは強力粉や中力粉といった小麦粉のタイプ(種類)、また特等粉や1等粉といった小麦粉のグレード(等級)が登場しましたので、ここで再度言葉の整理をしておきたいと思います。どちらも弊社WEBサイト(小麦のはなし、小麦粉のはなし)にまとめてはいますが、復習及び補足を兼ねてサラリとまとめてみました。
①タイプ(種類)
小麦粉の種類は、それに含まれるタンパク質の多い順に強力粉、中力粉、薄力粉と名前がついています。「強」、「中」とくれば次に続くのは「弱」ですが、「弱力粉」ではあまりに響きが貧弱なせいか薄力粉になったようです(#323)。小麦粉に含まれるタンパク質量は、小麦の種類によって決まります。つまり硬質小麦と言われる硬い小麦には多くのタンパク質が含まれ、硬さが程々の中間質小麦には、普通程度(?)、そして柔らかい軟質小麦は、少ないタンパク質となっています。
言い換えると小麦粉の種類というのは、製粉する前から小麦の種類によって決まっていて、軟質小麦をどんなに頑張って製粉してもパン用の強力粉はできません。日本には現在5種類の外麦が輸入されていますが、1CW(カナダ産)、DNS(アメリカ産)、HRW(アメリカ産)の3種は硬質小麦、ASW(豪州産)は中間質小麦、そしてWW(アメリカ産)は軟質小麦となっています。また内麦(国産小麦)は、そのほとんどが中間質小麦もしくは軟質小麦となっています。
②グレード(等級)
小麦粉を高温で燃やしたときに残る灰のことを「灰分」といいますが、この灰分量に着目し、灰分の少ない順に、特等粉⇒1等粉⇒2等粉・・・と名前がついています。小麦の断面図をみると、小麦特有のクリーズ(粒溝)が中心部分まで食い込んでいるのがわかります。そして灰分含有量は、表皮から離れるほど少なく、逆に外周部ほど多くなります。よって色調の鮮やかな小麦粉、つまり特等粉を採取しようとすれば、小麦の中心部分のみを、上手に取り分ける必要があります。
また小麦の品種を問わず、含まれるタンパク質は、外周部ほど多くなる傾向にあります。つまり同じ小麦から製粉された小麦粉でも、特等粉よりも1等粉、そして2等粉と、だんだんとタンパク含有量が多くなります。ただ一口にタンパク質といっても、中心部分と外周部分では、性質が異なるので、単純にタンパク質の大小での比較はできません。
このように小麦の中の灰分分布及びタンパク質分布は、一様ではありません。メロンやスイカの味は中心部分程甘く、皮に近くなるほど薄くなりますが、それと良く似たカンジで、小麦の場合は、表皮に近づくほど灰分及びがタンパク含有量が多くなります。また#416で紹介したように、小麦全体の灰分量も小麦によって異なります。例えば硬質小麦である1CWは1.5~1.7%であるのに対し、中間質小麦であるASW は1.2~1.3%と少なくなります。ですからその性質は小麦粉にも引き継がれるので、全く同じように製粉しても、強力粉⇒中力粉⇒薄力粉と灰分含有量は少なくなります。
ということで小麦粉の二大指標といえば、タイプとグレードを決定する「タンパク質含有量」と「灰分含有量」になります。ではこの2つが同じ値なら同じ小麦粉かというと全くそういうことはなく、この2つの指標は小麦粉の数ある性質の中のほんの一部にしか過ぎません。うどん(麺)の食感に大きく影響するアミロ値も重要ですが、これはあまり国際的な指標にはなっていません。小麦粉は元々ヨーロッパが発祥の地で、そこでの最大の関心事は、パンが如何に「白くてふわふわ」、そして「大きく膨れる」かでした。そして前者を決めるのが灰分で、後者を決めるのがタンパク質です。よってこの2つが国際的な小麦粉の指標として定着したのだと考えます。