#420 「グルコサミンはひざに効かない(山本啓一著)」 ・・・ ①
山本啓一氏は生化学・生理学がご専門の大学の先生ですが、その先生による衝撃的なタイトルの新書が目に止まりましたので、読んでみました。なかなか言い辛いことを歯に衣着せない表現でズバリと、また素人にも分かりやすいように書かれているので興味深く拝読いたしました。タイトルはピンポイントな表現ですが、内容は健康全般に関するもので、個人的にも納得させられる知見が数多く、例によって備忘録を兼ねて独断でまとめてみました。
①グルコサミンはひざに効かない
山本先生は、巷で販売されているサプリメントを飲んでも、ひざ痛は治らないと断言します。その理由を述べた部分を、以下に引用します:
足腰に不安をかかえる高齢者が増えてきたせいでしょう。グルコサミンとコンドロイチンの宣伝をよく目にします。このサプリを飲めば、さもひざに効くかのように宣伝しています。驚くかもしれませんが、グルコサミンは飲んでもひざには効きません。
更に、以前から気になって仕方がなかったのが、「お肌がプルプルになる」というのが売りのコラーゲンドリンクのコマーシャルです。コラーゲンの場合も同じで、飲んでも効果はありません。
・・・(中略)・・・
「私たちが食べたものは、そのまま吸収されるわけではありません。小さな分子に分解されてから吸収されます。つまり、生物が外界から食物としてとり入れたタンパク質、脂肪、炭水化物などの高分子は、胃や腸で吸収可能な低分子にまで分解されてから吸収されるのです。これを消化といい、生化学の重要な分野の一つです。
コラーゲンもタンパク質の一種ですから、小さな分子に分解されます。つまり食べたものがそのまま身体に吸収されることはありえない、というのが生化学の常識です。
先生が仰っていること簡単にいうと次のようなことだと理解します。コラーゲンはタンパク質の一種なので、それを経口摂取すると、それは体内で消化されて小さなアミノ酸になってしまい、それが再び体内で組み立て直されて、コラーゲンになるとはどう考えても理屈に合わない。またグルコサミンも糖の一種であるので、同様に消化されて、小さな分子になってしまうので、それがまた元のグルコサミンに戻ることはない、ということだと思います。
適切な喩えかどうかは分かりませんが、グルコサミンがひざに効くとしたら、同じ理屈で髪の毛を食べると、髪の毛が生え、お肉を食べると筋肉が増えるということになりますが、それを信じる人はあまりいないようです。
②食物繊維の効用
以前は「食物のカス」とみなされ、役に立たないと思われていた食物繊維ですが、最近は研究が進み私たちの健康にとって欠かせない第六の栄養素として定着しつつあります。しかし「実際の効用は?」となると、漠然と「腸内をきれいに掃除してくれる」みたいな感じでしたが、先生は次のように説明されています:
食物繊維とは食品に含まれる消化されにくい繊維質のことで、一般に、植物細胞壁の成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを指します。これらの食物繊維は、私たちのもっている消化酵素では分解されませんが、主成分であるセルロースやヘミセルロースはブドウ糖がつながってできたものなので、デンプンと同じくらい高い栄養価を持っているのです。
・・・(中略)・・・
こうして、腸内に棲みついている細菌は、私たちが必要としているビタミンのいくつかをつくってくれたり、免疫系を適度に刺激してくれたりして、とても役に立つのです。私たちに食物繊維が必要だというのは、じつはそれらの細菌群を養うためだといっても過言ではありません。