#421 食品に対する適正税率
山本啓一先生の「グルコサミンはひざに効かない」はなかなか過激なタイトルでしたが、その内容は、副題(元気に老いる食の法則)の通り健康全般に関する内容です。よってグルコサミン云々以外にも興味をそそられる内容が盛りだくさんで、その中で特に印象に残った事柄を2つ紹介いたします。
①食品に対する適正税率
最近はどの国も肥満が、健康上の大きな問題になっています。日本でもがん、心筋梗塞、脳卒中といった典型的な成人病は、肥満に大いに関係があるとされていますが、アメリカ社会においての肥満問題は更に深刻です。日本でも太った人は沢山目にしますが、アメリカ社会のそれは、我々の感覚で言うと、正に「異次元の」といった形容がふさわしく、アメリカ社会においては、如何にして人々の摂取カロリーを抑えるかが、健康上の急務になっています。以下は、本文からの引用です:
【NY市長はなぜ砂糖入り飲料の販売禁止を打ち出したのか】
アメリカ人に多いと言われる肥満は、砂糖を多く含んだ飲料を大量に飲むせいだと考えられます。2012年、ニューヨーク(NY)市長が、16オンス(473ml)を超える大型サイズの砂糖入り飲料の販売を禁止する方針を打ち出したのは、そうした理由からです。デンマークでも2011年に、脂肪を多く含んだ食品に税をかけることを決め、さらに砂糖を多く含んだ食品についても、課税することを検討しています。肥満の原因になるというだけでなく、糖そのものにアルコールに似た毒性があるというのです。
つまり砂糖や脂肪を多く摂取すると、健康を害するので、そのならないように高課税にしましょうという考えです。どこの国でもタバコや酒に高額の税金が課せられているのは、健康被害を防止するためで、「糖の過剰摂取」も健康を害するのであれば、同様に課税するべきだという考え方は、それはそれで確かに筋が通っています。
一方、ご承知のように日本では今月(2014.04.01)から消費税が5%から8%に引き上げられました。そしてこのとき議論されたのが、軽減税率です。軽減税率とは標準税率よりも低く抑えられた税率のことで、低所得者に対する負担軽減を目的にしています。つまり食品のような生活必需品は、誰にとっても必要不可欠なものであるから、購入しやすいように税率を下げようという考えで、この考え方にも一理あります。
しかし肥満を防止するために一部食品に高い税金を課すことと、生活必需品であるが故に軽減税率を適用することは明らかに矛盾しています。つまり食品に対する適正税率は、様々な問題を含んでいるので、一概には決定できません。ただひとつ言えることは、何れにしても、私たちの食生活や生活習慣を、できるだけ根本から見直さないと、財政は破綻するということです。
以前、どこかの新聞記事だったと思いますが、ある重篤の成人病患者が、「私は一国民として生きる権利を保証されているので、治療費については、国や市町村が負担するべきだ」という主旨の持論を展開されていました。医療費の無料化については、そうはしたくても、国の借金が1,000兆円を超えた現在、しかも医療費、社会保障費が依然として増え続ける中、誰が考えても実現的とは思えません。
またもし仮に医療費が無料になったとしても、医療技術の発達で更に高度な治療が可能になり、それは一層の医療費や社会保障費の増加を招くだけの結果になるかも知れません。つまり私たちが目指す方向は、健康寿命を延ばすことであって、単に寿命を延ばすことではありません。そして一旦、大人になってしまってからでは、食生活や生活習慣を直そうとしても、それを変更するのは至難の業です。よって食品の税率を色々議論するよりも、小さい内に食育や体育といった授業のなかで、正しい食生活や運動習慣を身につけてもらう事の方が、効果的かなとも考えます。