#443 「さぬきの夢」製麺研修会
ご存知のように「さぬきの夢」は、香川県が開発するさぬきうどん用小麦品種の総称で、初代は2000年に開発された「さぬきの夢2000」、そして現在は2009年に開発された二代目「さぬきの夢2009」へと切替えが完了しています。
その昔、うどん用小麦といえば全て香川県産でしたが、戦後海外から安価な小麦が輸入され始め、また天候不順による凶作も重なり、昭和40年代後半になると、オーストラリア産ASW がうどん用小麦市場を席巻するようになりました。しかし「本場さぬきうどんの小麦が外国産というのは、如何にもまずいではないか」という声に応え、「うどん県のうどん県によるうどん県のための小麦開発」が始まり、「さぬきの夢」が誕生しました。
ところで初代「さぬきの夢」、つまり「さぬきの夢2000」は確かに素晴らしい食味食感をもった小麦でしたが、うどんの「つなぎ力」となるグルテンがやや少なめで、そのため作業適性についてはASWに対し一歩リードを許していました。そしてその難点を補うために開発された品種が二代目「さぬきの夢2009」です。改良の結果「さぬきの夢2009」の製麺適性は、作業現場においては充分に実用的なレベルまでに向上し、今後益々の需要増が見込まれるところです。
ただ「さぬきの夢2009」の製麺適性は実用的には問題ないレベルまでに向上したことは事実ですが、それでも普段ASW の小麦粉を打ち慣れているうどん屋さんにとってみれば、多少気になる点がないわけではありません。そこで今回、香川県が掲題の「さぬきの夢」製麺研修会を主催した次第です。研修会では、製粉会社の担当者に「さぬきの夢」の小麦粉の特徴について説明をしてもらい、また実際に「さぬきの夢」を100%使用しているうどん店の大将にうどん打ちを実演してもらい、「さぬきの夢」に対する理解を深めようというのが狙いです。
グルテンについては一つ補足しておきたい点があります。それは「さぬきの夢」に限らず、元来温暖な地域、特に中四国・九州で耕作される国産小麦というのは、小麦に含まれるタンパク質(グルテン)が低く、また寒い地域になるほど、含まれるタンパク質が多くなる傾向にあります。タンパク質が少ないと作業時に気を遣うのは事実ですが、反面うどんがソフトそして上品に仕上がります。讃岐うどんが硬いというのは、事実ではなく、そもそもこういったソフトな麺質の中にしっかりとしたコシをだすのが、本来の讃岐うどんです。
さて話は戻って、香川県は今回の製麺研修会を通じて、「さぬきの夢」のうどん専門店への更なる普及を目指しています。具体的には、現在認定されている「さぬきの夢こだわり店」13店舗を近い将来30店舗にまで引き上げようという計画です。因みに「さぬきの夢こだわり店」とは、常時「さぬきの夢」を100%使用したうどんを提供しているうどん店で、しかも「めん、だし、サービス」の3つの厳しい審査基準を満たした、いわば讃岐うどんの三つ星レストランとして、「かがわ農産物流通消費協議会」が認定しているうどん店です。
こだわり店になるには、厳しい審査をパスする必要があるので、誰でも手を挙げれば、すぐに認定されるわけではなりません。しかしこだわり店になると、香川県から有形無形のサポートを得ることができるし、何より香川県産小麦を使用した、味わい深いさぬきうどんを提供できる点が最大のメリットかなと思います。しかし現実には「もし小麦粉を変更したら、顧客の反応がどうなるか心配だ!」とか「打ち慣れていない小麦粉にうまく対応できるだろうか?」と躊躇されているうどん屋さんもかなりあります。しかし「案ずるより産むが易し」といいます。この際、興味を持たれたうどん屋さんは是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。