#459 ある讃岐うどん店チェーンの閉店
先日、ある大手讃岐うどん店チェーンの香川県内1号店が閉店しました。うどん通なら誰もが知ってるM製麺は、面倒と言われる店舗毎の製麺方法の導入に加え、讃岐のセルフ方式を全面に押し出す斬新な手法で、支持を一気に広げ、現在国内では800店舗近くを展開する、文句なしのナンバーワンうどん店チェーンです。その繁盛ぶりが余りに素晴らしいので、その営業手法をそっくり真似る後発業者が続出し、看板を外せば、一見どこのうどん店がわからないような、そっくり店が今でも日本中には沢山溢れています。
しかし類似店の成長率は、明らかにM製麺のそれとは違いがあるので、成功の鍵は、単にその外見だけではなく、実際のうどんの味、サービスの品質、そしてオペレーションの手法にあることに違いありません。従来も大手うどん店チェーンというのは、いくつかありましたが、何れも同一屋号による300店舗の壁を突破することができませんでした。それをM製麺はいとも簡単にやってみせたばかりでなく、その2倍以上の店舗展開を実現したわけですから、その成功実績が従来と比較して如何に華々しかったのかが容易にご理解いただけると思います。
それほど全国的に大成功を収めたうどん店チェーンであるが故、その香川1号店が丸3年をもって閉店するというニュースは、地元紙でもかなりの注目度で取り上げられました。「本場 厳しかった?」の見出しで始まる記事は、県内うどん店との過当競争、消費税増税による影響、不利な立地条件等をその撤退理由として挙げていました。そこで記事の検証を兼ねて、閉店を間近に控えた先日、そのM製麺香川県内1号店にいって参りました。
休日であったせいか、それとも閉店の告知後であったためか、店内はかなりの賑わいをみせていました。釜あげうどん大(380円)と野菜のかき揚げを注文すると、待たされることもなく、オペレーションは非常にスムーズ。店員さんの声は、明るくそしてはっきりしていて気持ちが良く、流石に全国展開しているチェーン店であると得心しました。肝心の釜あげうどんは国産小麦特有の旨味があり、うどんの品質、サービス、オペレーションのどれも素晴らしい水準でした。
ただ流行っていたお店ではあるけれど、閉店したのは事実であり、その理由は単純に言うと、「費用対効果」が想定外であったからに他なりません。周りのうどん関係者にその辺りの事情を聞いてみたところ、各人各様の理由を挙げていらっしゃいましたが、次の2点が客観的にみて説得力があるように思えましたので、簡単にまとめてみました。
①価格
M製麺成功の理由のひとつとして、価格優位性があります。つまり安価でうどんを堪能できるファーストフード店という位置づけです。しかしかけうどん280円という価格設定は、香川県内では必ずしもそうではなかったようです。香川県内でも2014年4月の増税後(5%⇒8%)は、うどんも価格が引き上げられました。この増税後の調査(#428)では、かけうどんの平均価格は234円、特にセルフうどん店に限ると200円でした。よってこの80円という価格差が、影響しているとの意見でした。
②他のうどん店との過当競争
もう一つは、競合店が多過ぎるとの理由です。常に新陳代謝しているので正確な店数は不明ですが、2013年12月の調査では少なくとも694店舗のうどん店があるようです(#432)。よって香川県外では、「うどん店vs.他業種の飲食店」という構図が、香川県内では「うどん店vs.その他大勢のうどん店」となってしまい、その特徴が薄れた結果、思うような集客効果がでなかったという説です。