#467 H26産「さぬきの夢」は4,470t

f467昨年(H26)収穫された「さぬきの夢」は4,470tで、一昨年(H25)の5,314tに対して84%程度でした(画像参照)。この大きく減少した理由は、播種期における降雨です。讃岐における小麦の播種は、11月~12月ですが、平成25年の暮は、降雨が多かったために思うように播種ができませんでした(H25の作付面積 1,465haに対し、H26は1,399ha)。年内に播種できなければ、「年明けて播けばいいじゃないか」と仰る方もいますが、適期を遅れて播いても小麦は大きくなりません。物事にはタイミングというものがあるのです。幸いH27 産の播種面積は1,597haとほぼ予定通りの播種ができたので、このまま順調に推移すれば今年はかなりの高収量が期待できそうです。

一方、別の悩みもあります。国産小麦は銘柄別に、毎年入札が実施され、人気銘柄は高値で落札され、不人気銘柄はなかなか買い手がつかないので、価格は下落します。そして「さぬきの夢」はここ数年上がり続けた結果、具体的な数値は控えますが日本一高価な小麦となりました。日本の小麦にはマークアップという税金分が上乗せされているので、日本一高いということは、世界一高い小麦ということになります。人気があるので高価になるのは仕方ありませんが、我々中小製粉にとっては、かなりの負担増になり、なんとか他の銘柄と同じような水準になってほしいと願わずにはいられません。

実は北海道のある銘柄は数年前に、その人気が過熱した結果、価格が暴騰しましたが、実力以上に高くなった小麦はその後暴落しました。今考えると、オランダのチューリップ・バブルみたいなミニ小麦バブルでした。よって「さぬきの夢」もその轍を踏まないよう願うばかりです。小麦が上がると小麦粉価格も上がります。うどん屋さんは「さぬきの夢」の良さはわかっていても、余りに高くなると、うどん価格に転嫁できなくなるので、買うことができなくなります。物には相応の価格というものがあります。

f467_3ところで「さぬきの夢」とは香川県で開発された小麦品種の総称ですが、初代「さぬきの夢」は2000年に開発された「さぬきの夢2000」でした。そして現在の二代目「さぬきの夢」は2009年に開発された「さぬきの夢2009」です。「さぬきの夢2000」は確かに素晴らしい小麦でしたが、うどんにおける接着剤の役目を果たすグルテンが少し脆かったため、作業性に若干の難があったのが唯一の欠点でした。そしてその欠点を補って登場したのが、「さぬきの夢2009」でした。「さぬきの夢2000」から「さぬきの夢2009」へのバトンタッチは、H22に始まり、H25には全量「さぬきの夢2009」に切り替わりました(右画像参照)。

いま日本では、各地域で様々な銘柄が開発されています。福岡のラー麦はラーメン専用に開発された小麦です。また#464でご紹介した素晴らしい色調の「きぬあかり」はこれから愛知のうどん界を背負って立つ新銘柄です。北海道には、麺用の「きたほなみ」、パン用・ラーメン用の「ゆめちから」などの品種があります。以上はほんの一例で、これ以外にも多くの各地域特有の小麦があります。そしてこの小麦の多様性を利用して国産小麦を更に活性化させようという動きが広がりつつあります。現在、麺用小麦の主力はオーストラリア産小麦のASWですが、今後国産小麦の存在感が更にアップすることを願うばかりです。

最後になりましたが、現在世界の小麦生産量は7億t(#465)。日本のおける需要は600万tなので、1%弱となります。また国産小麦の総生産量は約90万tなので、これは日本における需要の15%。「さぬきの夢」は現在5,000tなので、国産小麦の中の更に1%未満となります。つまり「さぬきの夢」の生産量は決して多くはありませんが、私たちはこれを基に「うどん県」の活性化を目指して頑張っているところです。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。

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