#474 バス通学
昭和の時代、田舎のバスはどこもかしこもギューギュー詰めでした。特に雨降りの日は、一層混み合い、加えて道路事情が悪いため、至るところで渋滞を起こし、その度に車掌さんが車外に出て、笛を吹きながら誘導していたのを覚えています。それがマイカー時代を迎えた今、地方のバスには、乗客がほとんど乗っていません。さてイラスト担当者による、新着情報をお届けします。
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都内で生活していると移動手段はどうしても、電車中心になります。JRや私鉄の路線網が充実しているので、大抵のところは、電車を乗り継いでいくことができます。乗り換えや駅への移動などで、結構歩きますが、気分転換や運動不足解消にもなるので、個人的には電車通学は気に入っています。ただ雨降りの日は、駅までの移動が憂鬱になるので、バスを利用することがあります。都内には電車に劣らずバス路線も縦横無尽に走っているので、捜せばほとんど歩くこと無く目的地へのルートを発見することもあります。正に「痒いところに手が届く」という感じで、結構重宝しています。
電車と違い、都内のバスはどこまで乗っても一律210円という定額料金が多いようです。バスには老若男女、実に様々な人達がのっていますが、特に年配の方にとっては、電車のように駅構内を移動することなく、手軽に利用できるのでとっても便利だと思います。仕事や学校の行き帰りは勿論、ちょっと近場でも気軽に利用できます。渋滞に巻き込まれると、時間がかかってしまいますが、それまで知らなかった道や景色を発見するととても新鮮な気分になります。
まだ上京するずっと以前の話ですが、私は小学1年生のときに、今の実家に引っ越してきました。地方の田舎なので、電車の駅もなく、当時は随分とバスのお世話になりました。田舎のバスは一律料金ではなく、乗った距離に応じて課金される従量制です。小学校はバス通学でしたが、バス停は家から歩いて5分のところにありました。小さな身体に大きなランドセルを背負ってバス停まで歩いていたところ、その途中で突如向こうからわんちゃん(野生か飼い犬かは定かではありません)が走ってきて、ランドセルに覆いかぶさってきました。思わず私が悲鳴をあげると、近所の人が箒や熊手を掴んで出てきてくれ、事なきを得ました。当時は必死でしたが、今では楽しい思い出です。
バス通学を始めたその翌年、突如家の前の畑横にバス停が増設されました。利用者は自分以外ほとんど見たことがないので、なぜそんなに有難いことが起こったのか、未だに良く分かりません。しかし目の前にバス停があっても、今度は近いという安心感からか、結局家をでるのが遅くなり、以前よりバスに乗り遅れることが増えました。
通学では毎日同じバスを利用するので、当然居合わせる人たちも同じ人ばかりで、自然と顔なじみになります。この停留所からはこんな人が乗ってきて、その人はいつも病院前で降りて、といった感じで乗降の停留所まで覚えてしまいます。また知り合いの人とつい話し込んでボタンを押し忘れても、周りの人が声をかけてくれるし、運転手さんも心得ているので、ボタンが押されなくても、ちゃんと停止してくれます。
帰省の折には、時々同じバスを利用しますが、相変わらず昔と同じルートを同じ時間帯に運行していて、「変わってないなあ」と安心する反面、乗っているのは知らない人ばかりで、ちょっと寂しい気もします。ただ地方はどこもマイカー全盛時代で、バスの利用客は年々減少の一途を辿っています。どこでも乗降できるフリー乗降区間を設けたり、自治体が無料クーポン券を配布したり努力はしているものの、その効果は思うように上がらず、車輌は昔の大型バスから、マイクロバスのようなかわいい小型バスに変わってしまいました。