#485 沖縄そば

f485沖縄には沖縄特有の名物がたくさんあります。沖縄風クレープのちんぴん、揚げ菓子のサーターアンダギー、沖縄版ちぢみのヒラヤーチーなど、一見名前だけからはどんな料理か想像できないものばかりです。そんな中、沖縄そばは私たちにも馴染みがある沖縄を代表する料理です。もっとも「うちなーすば」と方言で発音されるとお手上げではありますが。それはさておき先日、地元唯一の製粉会社O製粉製造部T氏から直々、沖縄そばのレクチャーを受けましたので、復習も兼ねて簡単にご紹介いたします。

まず「沖縄そば」とか「そーきそば」と言ったりしますが、これはトッピングの豚肉の違いによります。前者は、皮付き豚バラ肉の煮込みである「三枚肉」であるのに対し、後者は豚のスペアリブの煮込みである「そーき」が載っかっています。またご承知のように名前は沖縄そばですが、そば粉は一切使用していません。良く似た事例に「茶そば」がありますが、こちらはそば粉を使用するもの、しないもの両方あるようでとっても紛らわしく、特にそば粉はアレルギーが強いので、心配です。

レシピは色んなバリエーションがありますが、以下はご教授いただいた小麦粉からの麺づくりまでのレシピです:
【原料の基本配合】
小麦粉:灰分0.42以下、たんぱく質11%以上
加水量:35%(水31.7%、食塩2.5%、粉末かんすい0.8%)
生地厚:3mm
切刃 :#8~#12(2.5mm~3.8mm)
【麺の調理方法】
1.麺を1~2分ゆでる(半ゆで状態)
2.麺を取り出し2.5%の油(対麺重量)で絡める。
3.ビニール袋に入れ、冷蔵庫で半日~1日熟成させる
4.再度盛り付け直前に、沸騰したお湯に5~30秒投入し、好みの硬さになるようゆで戻す。

【私的感想】
基本配合は想定の範囲内でしたが、びっくりしたのは麺の調理方法です。僅か1~2分ゆでた半ゆで状態の麺を取り出し、油を絡め、その後冷蔵庫で時間をかけてじっくりと熟成させるという方法は、初めて聞きました。この太さの麺なら1~2分ゆでただけでは、小麦でんぷんは表面部分しか糊化せず、中心部分はまだ生の生地に近い状態、つまり「粉っぽい」ほずです。これが余熱により熟成時間中にどれだけ調理されるのかは不明ですが、実に衝撃的な調理方法であると感じました。

あの沖縄そばの不思議なというか、独特の食感の秘密は、この茹で方にあったようです。しかし「仮ゆで」置きすることで、「本ゆで」時間は、僅か数十秒にまで短縮され、これはオペレーション的には素晴らしいアイデアです。これなら繁忙時間帯に大量に客が押し寄せても、待たせることなくスムーズな対応が可能です。麺類にとってゆで時間短縮は永遠の課題ですが、これは正に目からうろこでした。

もし麺が太いさぬきうどんにこの方法が応用できれば、ゆで時間短縮に腐心しているうどん店の大将にとっては朗報になること間違いなしですが、そうはうまくいかないのが現実です。沖縄そばは「仮ゆで」後は、油を絡めますが、これは麺同士がくっつくのを防止する「ほぐれ剤」の役目をしています。加熱すると表面が糊化するためそのまま放置すれば、当然くっついてしまいます。よって油を絡めることで、くっつきを防止できるのです。

さぬきうどんの「ゆで時間短縮」方法としてよく用いられるのが、タピオカでんぷんを練り込むことです。この理由は、話が少し専門的になりますが、タピオカでんぷんは、糊化開始温度が低いために、小麦粉よりも調理時間が短いことが知られています。よってタピオカでんぷんを小麦粉に練り込むほどゆで時間が短縮できることになります(新着情報#376)。しかしその代償として、うどん自体の風味が薄れるためその評価は分かれます。作業性と食味のどちらを優先するか、その辺りが思案のしどころです。