#496 インドネシアへの旅・・・ジャカルタのパン事情

f496弊社の所属する中小製粉組合の創立55周年記念行事として、近年成長著しい東南アジアを視察して参りました。従来は日本の小麦需要の90%以上を依存するアメリカ・カナダ・オーストラリアなどの小麦畑やその出荷状況などを見て回ることが多かったのですが、今回は視点を変え、市場が急成長しているインドネシアと現在アジアでダントツの経済力を誇るシンガポールの2ヶ国をピックアップしました。今回はインドネシア、次回はシンガポールについて独断でレポートします。尚、今回は双日㈱様に大変お世話になりました。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

さてインドネシアは、中国、インド、アメリカに次ぐ人口世界第4位の大国です。現在一人当たりのGDPは3,150ドルと日本の1/10以下ではありますが、人口は日本の2倍の2億4,000万人と、その潜在的な市場価値は誰もが認めるところです。当初は漠然と、「ジャカルタの街並みは、一昔前の東京みたいな感じかな」と勝手にイメージしていましたが、実際は高層ビルが立ち並び、どこの先進都市にも負けないその近代的な光景にびっくり仰天しました。

f496_2一方インフラはまだまだ不十分で渋滞は至るところで発生します。一説によるとジャカルタ市内の自動車全てを、道路に並べることができない程自動車が多い(道路が少ない?)そうです。街中を走り回る無数の日本製自動車、日本商社により開発された多数の工業団地、そして日本技術による現在建設中の地下鉄などをみても、インドネシアと一番関わりの深い国は日本であることを実感します。それ故今回、インドネシア高速鉄道計画に日本案が採用されなかったことに対する関係者の落胆ぶりは、ジャカルタまでくるとよく理解できます。

前置きが長くなりましたが、ジャカルタでサリロティ㈱のパン工場を見学させていただきました。サリロティは1995年設立、1996年操業開始し、現在インドネシア国内に10工場を展開中。従業員は各工場300人程で、従業員の給与は月給3万円程度と日本と比較するとかなり割安ですが、業務内容によっては10万円以上の方もいらっしゃるそうです。工場見学後にいただいたチョコレートサンドイッチは、毎月2,000万個以上売れるサリロティ社の超ドル箱商品です。インドネシアの人々はチョコレート味が特にお気に入りだそうです。

f496_3このパンの価格は40円、日本の感覚だと80~100円辺りなので日本の約半額といったところでしょうか。ただGDPや給与を考慮すると、少し高価ではありますが、そのチョコレートパンの美味しさが評価され飛ぶように売れています。経験則によると一人当りのGDPが2,000ドルを超えるとパンが徐々に売れ始め、5,000ドルを境にもう一段ギアが入り、10,000ドルを超えると弾けるそうです。最初は米食主体で始まり、GDP の伸びに応じて麺食、更にはパン食へと「食のが多様化」が進むようです。

見学が終わり屋外にでると大きな小麦粉配送車が停まっていました。小口ユーザに対しては、小麦粉はクラフト紙の袋で流通しますが、大きな工場はこのように大きなトラックに小麦粉だけを入れて配送します。セメントやガソリンなどを運搬するタンクローリー車と同じです。ところでこの配送車の側面にはボガサリ(Bogasari)と表示されていますが、何を隠そうこのボガサリ製粉こそ、単一工場では世界一の規模を誇る製粉工場です。情報によれば3ラインの製粉ラインで24時間当り17,800トンの小麦を製粉しています。

f496_4数字だけ聞いてもこれがどの位すごいのかは、ピンときませんが・・・。日本の小麦需要は年間およそ600万トン。600÷1.78=337日なので、ボガサリ1社で日本の総需要が賄える計算になります。またうどん用小麦粉の歩留まりを60%、うどん1玉の小麦粉を80gとすると、ボガサリ製粉が24時間製粉すれば、1億3,350万玉のうどんができる計算になり、日本人全員が食べてもまだ余ります。インドネシアは人口世界第4位、そして小麦を100%輸入に頼っているため、このような巨大製粉工場が誕生したのだと考えます。

 

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