#508 うどんテイスティング・・・カレー粉うどん
カレーうどんではありません。カレー粉うどん、正確に言うと「カレー粉入りうどん」です。陰木さんといううどん愛好家の方から送っていただきました。まず製造方法ですが、お手紙によると小麦粉500gに対し、カレー粉小さじ1/3程度を塩水に溶かし、練り込んだということです。お送りいただいたうどんは、カレー粉うどんと標準品の2種類ですが、並べてみると違いは一目瞭然。僅かの量ながらカレー粉の威力が如何に強烈かお判りいただけるでしょう。
滅多にない機会ですので、早速営業部及び製造部を交えてうどんテイスティングをおこないました。外見は、カレー色(?)ですが、これをみてカレーを連想される方はいないと思います。また通常品と比べ短麺が目立ちますが、これはカレー粉の成分にうどんの「つなぎ力」の源となるグルテンの結着力を脆くする働きがあるのかも知れません。見た目だけではわかりませんが、1本啜ると、確かにカレーの風味が感じ取れます。そして噛んだ後に、舌に少し「ピリピリ感」が残ります。
次につゆをつけてテイスティングしました。「それなりに美味しい」というのが共通の感想です。ただ「確かに美味いが、敢えてそこまでこだわる必要があるのか」という意見もあり、それもご尤もです。ちなみに陰木さんは、これにカレーをかけて召し上がるそうで、インド人もびっくり、これこそ「究極のカレーうどん」かも知れません。冗談はさておき、このカレー粉うどんの総合評価としては、定番商品にはなるのは難しいというのが我々の結論でした。
一方、標準品は好評で、噛んだ後、ほのかなうどんの甘味が伝わってきます。こういううどんを口にすると正直「ほっと」します。最近は、勢い「つるつる」、「もちもち」といった食感の良さだけで評価されることがありますが、うどんに限らず食品の本質はその食味にあると思います。どんなにコシがあっても、コシだけで、食味の乏しいうどんは、食べているうちにだんだんと飽きがきます。「毎日食べても食べ飽きない」ためには、小麦でんぷん特有の旨味をうどんの中に上手く伝える必要があり、それには水回し、練り、熟成といった工程が重要になります。
さて改めてカレー粉うどんも含めて、一般的な「混ぜ物うどん」について独断で申します。これまで先人たちがうどんの中に、ありとあらゆる原材料を練り込み、新商品開発に挑戦されてきました。ざっと思いつくだけでも、もろへいや、こんにゃく、にんじん、わかめ、ごま、ほうれんそうなど、枚挙にいとまがありません。ありとあらゆる食材が試されてきました。しかし定番商品として残っているものはほとんどありません。皆さん最初の一口は、「あぁ、めずらしいですね」とか「あら変わった味ね」など好意的な感想を述べられますが、大抵それでおしまいです。
うどんの麺は、食事に例えると「ご飯」つまり白米にあたります。よってうどんに出汁が絡み、天ぷらなどのトッピングによって更に美味しさが増します。うどん自体に味がなくても、旨い出汁があればそれで十分という考えもありますが、それは正しくないと思います。それが証拠にタピオカでんぷん100%のうどんを食べても美味しく感じないはずです。時々「このうどんは、つるつるして出汁がうまく絡まない」という声も聞きますが、これは実は「うどん自体に味がない」のでそう感じるのではないかと、個人的には考えています。