#516 地粉うどんテイスティング・・・北海道・さぬき・九州

きたほなみ、さぬきの夢、チクゴイズミ!

きたほなみ(北海道)、さぬきの夢(さぬき)、チクゴイズミ(九州)

あるうどん屋さんから、「地粉3種でうどんを打ち比べてみたいので、粉の手配をしてもらえんやろか?」との依頼があり、ついでと言っては何ですが、当方でもうどんを打ってみました。使用した小麦粉は、①きたほなみ(北海道)、②さぬきの夢(香川県)、③チクゴイズミ(九州)。きたほなみは、内麦(国産小麦)では一番多く生産されている品種、一方チクゴイズミは九州を代表する小麦です。現在、北海道と九州を合わせると、内麦の約80%が生産されています。

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使用した3麦のデータは右画像の通り。灰分は小麦粉の純度を表す指標の一つで、きたほなみの0.302は出色です。一般にこの値が低い程、小麦粉も白くなる傾向がありますが、今回のペッカテストでは、画像からもわかるように白さの順番では、「さぬきの夢」>きたほなみ>チクゴイズミとなりました。ただASWに良く似た淡黄色を呈する、きたほなみの色調は、食欲をそそります。一方うどんの「つなぎ力」の指標となるグルテンに着目すると、「さぬきの夢」はかなり低く、うどん作りに丁寧さが求められることが想像できます。

少し見づらいですが、きたほなみは軽い淡黄色、チクゴイズミは僅かにくすんでいます。

少し見づらいですが、きたほなみは軽い淡黄色、チクゴイズミは僅かにくすんでいます。

 

実際にうどんを延ばす段階では、①きたほなみは、程よい弾力があり、ASWを連想させる作業適性の良さが感じられました。一方②さぬきの夢は、グルテンが低いため、力を入れなくても、生地がどんどん延びていきます。よって薄くなり過ぎないよう注意が必要です(薄くなり過ぎた生地も元には戻りません)。③チクゴイズミもどちらかというとグルテンが低いので、延ばしやすい生地でした。さて肝心のうどんテイスティングですが、以下簡単にまとめてみました。

【色調】うどんの色調は、ペッカテストの結果がそのまま引き継がれます。①きたほなみはASWほど強くはありませんが、淡黄色があり食欲をそそる色調。一方、②さぬきの夢は、白く仕上がりますが、どちらかと言うと蛍光灯のような白さです。③チクゴイズミは、画像からは判断し辛いですが、灰分が少し高い分、若干くすんだ色調にゆであがりました。ただ元々国産小麦というのは、くすんだ色調が特徴で、そういう意味で3種の中ではこれが最も国産小麦粉らしいとも言えます。

【食感】①きたほなみは、噛んだときにグルテンによる跳ね返りが感じられ、ASWに相通ずるものがあり、この弾力はなかなかいい感じです。②さぬきの夢は、対照的に跳ね返りが少なく、均一な食感。また表面にぬめりがありますが、これに関しては個人的な評価が別れるところです。③チクゴイズミは、もちもち感があり、いかにも内麦らしくまたチクゴイズミらしい食感です。

【食味】①きたほなみは、あっさりとした素直な食味に対し、②さぬきの夢は、さぬきの夢独特の小麦の風味を強く感じます。③チクゴイズミも小麦の風味を感じますが、それはさぬきの夢とは異なり、小麦によって食味も異なることが実感できます。

【総合評価】3種の地粉はそれぞれに特徴があります。①きたほなみは、その色調と食感の良さは、ASW を連想させます。②さぬきの夢の良さは、独断ですが、その食味の良さにあると思います。ただグルテンが少ないために、ある程度作業性が犠牲になり、その結果短麺が増える傾向にあります。この辺りが「打ち手を選ぶ」と言われる所以です。食味の良さは、この作業性の手間を十分に補うものだと考えますが、この点は評価が別れるところです。

③チクゴイズミは、程良い風味と、もちもち感のある触感で、内麦としてバランスがとれています。多少くすんでいるのも、「あばたもえくぼ」、そもそも内麦とはそういうもので、内麦らしい内麦とも言えます。最後にうどんテイスティングとは直接関係はありませんが、小麦が完全自由化になると国産小麦は、他国の事例から察するに、消滅する運命にあります。日本は狭小な農地が多いため生産コストが高いためです。一旦なくなってしまうと元には戻りません。何とか内麦を存続させてほしいと願うばかりです。

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