#517 四国新幹線のゆくえ・・・地方間格差の拡大

四国新幹線

四国新幹線

先日の天声人語(2016.3.28)で「四国新幹線」が取りあげられ、土地柄ついつい興味津々で読みました。昨年の北陸新幹線、そして今年の北海道新幹線と開通が相次ぎました。「新幹線なんか無い方が田舎らしくていいよ」とか「新幹線が開通すると最初は活気がでても、その内にストロー効果で地方は益々疲弊するのではないか」など、負け惜しみとも取れる声も聞かれますが、全体として考えると経済効果はアップするようです。天声人語のコラムを要約すると次のような感じでしょうか。

現在400万人の四国の人口は、予測では30年後には、300万人に減少する。これは四国の1県が丸々消滅することを意味し、これを防ぐには四国新幹線が不可欠だ。しかしその道程は平坦ではない。「我田引鉄」とは、有力政治家が力づくで、地元へ路線を引かせることを言うが、それが現在も事実なら四国新幹線実現は益々厳しくなる。というのは一票の格差是正措置により、今度の参院選では、高知と徳島が合区され、議員定数が更に1名減るからだ。中央と地方の格差は拡がる一方だが、同様に地方間格差も深刻である。

つまり新幹線の有無が地方活性化の大きな鍵となります。しかし我田引鉄の牽引力となる地元選出の議員が減ってしまえば、新幹線導入の夢は遠のき、四国は益々窮地に追い込まれてしまいます。一票の格差を是正することに異論はありませんが、格差の是正が更なる格差を生む要因となる可能性はあります。結果、何でもかんでもブラックホールみたいに東京に吸収されてしまうかも知れません。

現在、東京では至るところに最先端技術を結集した高層ビルが立ち並び、地下鉄一駅を建設するのに何百億円もの資金が惜しげも無くポンと投入されます。1000万以上もの人々が住んでいるため、全てが集約され、効率的に運営されているので、可能になったことだと思います。そして生活が更に便利かつ快適になるので、益々地方からの人口流入が加速されます。

ただ新聞記事だけを読まれた方は、香川はまるで「地の果て」みたいな印象を持たれるかも知れません。しかしどこも住めば都、住んでいるとそこそこに快適です。気候温暖、風光明媚な香川県は日本一狭い県なので、どこへも1時間以内でいけて便利です。全体的にフラットで、所々小高い山がある香川県特有の地形は、サイクリストにはもってこいで、その気になれば毎朝好きなだけ自転車を漕ぐことができます。そして何よりさぬきうどんがあるので、うどんの食べ歩きに飽きることはありません。

地方の地盤沈下に、私たちもじっと手をこまねいているわけではありません。行政が率先して色々手は打っています。人口の自然減少はやむを得ませんが、さぬきうどんを核にうどんツアーなどの観光客を呼び込み、「周遊人口」を増やす取り組みにも注力しています。また「海の復権」がテーマの瀬戸内国際芸術祭2016は今年3回目を迎え、具体的な成果として、一度は休校した男木(おぎ)小中学校も2014年4月1日に再開しました(#515)。

アメリカはあれだけ広いのにも拘らず(広いからか?)、全米各地に人口が分散し、ニューヨークは経済の中心、ワシントンDCは政治の中心と役割分担ができています。また全米各地に特徴ある大学が点在し、経済、教育、生活全ての面において多様性の良さが実践されているように見えます。一方、ただでさえ狭い日本なのに、なぜそこまで一極集中する必要があるのかよく理解できません。地域住民の努力は勿論必要ですが、それを解消するのが政治本来の役目だと思います。地方創生、地域活性化が看板倒れにならないことを願うばかりです。