#526 都内にも押し寄せる近代化の波

店主によるポップが秀逸な本屋さん

店主によるポップが秀逸な本屋さん

イラスト担当者による新着情報をお届けします。高層ビルがびっしり建ち並ぶ山手線内とは対照的に、外部にはまだ昔の街並みが残っている地域があります。しかしそんな住居地域にも近代化の波は除々に押し寄せています。生活が便利になるのは良いことですが、古い街並みが無くなるのは残念です。木造建築と石造建築との違いによるのでしょうが、ヨーロッパには、古い街並みが沢山残っていて羨ましいです。「古いもの」は作ることができません。できる限り存続させてほしいと願うばかりです。
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私が今住んでいるアパートに越してきて、早くも5年目を迎えます。一応23区内ですがローカル感溢れる街並みで、駅を降りるとすぐに昔ながらの「ナントカ銀座」みたいな商店街がメインストリートとして賑わっています。しかしそんなのどかな街並みも、高齢化・老朽化の影響で、近年風景が目まぐるしく変化しています。私が越してきた時、お隣さんは古い木造の一軒家でしたが、それは3年前に取り壊され、あっという間に今風の住宅に建て変わりました。駅までの道程は歩いて僅か8分ですが、その道中至るところで同様の光景がみられ、あっけない思いです。

そして今年に入ると、次々と大きな変化が起こっています。4月にはお気に入りの書店が閉店しました。この書店は商店街の中にあり、私もよくお世話になりました。店内は狭く品揃えが決して充実しているとは言えませんが、店主さん厳選の本には、丁寧に書かれたポップが添えられ、とてもアットホームな店内でした。この書店のお陰で、自分のお気に入りの作家さんもできましたので、愛着も一入でした。人通りも決して少なくはなかったのですが、やはり都心の大型書店やネット書店の影響が大きかったのでしょう。

新地下駅工事事業のため閉店するスーパー

新地下駅工事事業のため閉店するスーパー

更には5月には駅前のスーパーマーケットが閉店になりました。地域住民にとってこの衝撃はあまりに大きいものでした。大げさでなく、この駅を利用しているほぼ全ての人々がこのスーパーを利用していた筈で、街になくてはならない存在だからです。閉店の理由は、新地下駅工事事業です。駅近辺には、いわゆる「開かずの踏切」があり、それが近隣住民の悩みの種でした。朝夕などは、電車が連続して通過するために、5分以上待つこともザラです。

「5分の待ち時間の解消」と「スーパーの利便性」を天秤にかけると、個人的には後者を選択します。でもサラリーマンの皆さんにとっては、時間短縮の方が、優先順位が高いのかも知れません。何れにしても新地下駅工事は既にスタートし、3年後には近代的な新地下駅に生まれ変わります。そこにはきっとモダンなスーパーが開店し、銀行やちょっとしたショッピングモールもできるかも知れません。3年間我慢すれば、今よりずっと便利な生活が待っている筈です。

でも私の個人的な好みを言えば、多少不便でも、今の古臭い昭和の面影が残った商店街の方が好きです(平成生れなので昭和の生活は知りません)。東京の下町にも近代化の波が押し寄せ、数年後には近代的な街並みに変貌します。しかしそうなってしまうと、駅構内の風景だけでは、金太郎飴と同じで、どこの駅なのかは区別できないでしょう。何か今まで住んできた街がなくなるようで、虚しくなります。

そういえば田舎の街にも同じ現象が起きています。昔ながらの商店街がどんどん消えて無くなり、その代わりに現れるのは全国定番のコンビニ、スーパー、牛丼チェーン店、ファストファッション、ディスカウント店、ハンバーガーショップなど誰もが知ってるお店ばかりです。デジカメで撮った画像をみせると、どこの街か、誰にもわからないんじゃないかと思います。便利にはなったけど、なにか寂しくなります。