#555 笑顔元気くん@金比羅宮
前回(#554)は、金比羅祭礼図屏風をご紹介しました。これは1702(元禄15)年の本社屋根吹き替えを記念し、金毘羅宮の依頼により、当時の例大祭の様子を、狩野休圓(かのうきゅうえん、1641-1717)が元禄年間(1688-1703年)に描いたものと伝えられています。六曲一双の立派な屏風には、左隻(左側の屏風)に、二王門(大門)から本社に達するまでの山上の風景、また右隻(右側の屏風)に、頭人行列や門前町など山下の様子が、広がります。またこの屏風には248軒の建物と1492人の人物が克明に描かれていて、文献史料の乏しい元禄期の金毘羅門前町の様子や社会風俗などを知る上で貴重な史料といわれています。
特にうどんファンとして見逃せないのは、三軒のうどん屋です。そこには単に三軒のうどん屋さんが描かれているだけでなく、其々が「延ばし」、「切る」、「捏ねる」といった異なる工程の場面が描かれているのです。狩野休圓さんは、後世の人たちに当時のうどん作りの工程を伝えようと、このリアルなタッチで私たちに残してくれたのかも知れません。さて前置きが長くなりましたが、イラスト担当者による新着情報をお届けします。
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年が明け、あっという間に1月も後半に入りました。みなさん、年末年始はゆっくり過ごされたでしょうか。私は年末の29日に香川へ帰省しました。年末年始といえば私の実家では、永年続く食習慣があります(#506)。そして今回もぶれることなく毎晩判でついたように、蕎麦三昧の食事を堪能(?)しました。私にはよく理解できませんが、父親曰く「作りおきの冷たいおせち料理よりも、暖かいかけ蕎麦の方がずっと美味しく、いつまで経っても飽きない」っと。
正月2日には、珍しく友人と金毘羅宮へ初詣にでかけました。金刀比羅宮(通称:金毘羅さん)は香川県内でも有名な観光スポットで、全て階段を登りきるとその数1368段にもなります。確か前回は、両親に連れられていった2001年のことだったと思うのでかなり昔になります。今も当時のことははっきりと覚えていて、自分で言うのもなんですが、実に大らかで素直な子供でした。そして今回、金毘羅宮の階段に再挑戦したところ、登るにつれて息は苦しく、また会話もなくなり、日頃の不摂生を痛感しました。
ところで登っている最中、私の目にあるイラストが飛び込んできました。「ようこそおいでくださいました」の垂れ幕の隣に、やけにゆるいキャラクターが描かれているのです。友人二人には、私の感動が全く伝わらず無反応でしたが、私は本殿に到着するまで、ずっとそのゆるキャラが気になっていました。そしてもやもやしながらも本宮に到着し、お参りを済ませ、お守り売り場に行くと、なんとその「ゆるキャラお守り」が売られているではありませんか!名前は「笑顔元気くん」!
これは宮司さんが子供をイメージして描いた新しいキャラクターのようで、お守りの解説を見ると「ただ、じいーっと眺めてるだけで、思わず笑みがこぼれてくる不思議な、楽しい絵です」(引用)っと。「解説までゆるい!」、それが私の第一印象でした。しかしもっと驚きなのはそのカラー展開。青、赤、白、トリコ。「トリコ…トリコロール?!」なんともおしゃれな響きではありませんか。お守りでトリコロールなんてそうそう見るものではないと思うのですが。そんなゆるくて斬新すぎるお守りの魅力にまんまと乗ってしまいました。金刀比羅宮といえば昔から金色のお守りが有名ですが、私はそれには目もくれず、ちゃっかり自分の分と東京の友達の分を購入しました。それ以来ずっと、お財布に入れているのですが、開ける度に「なんだこれ」と思わず笑ってしまいます。宮司の思惑通りですね。ぜひ、この笑顔元気くんに癒されたい方は、金刀比羅宮を訪れてみてください。