#561 「さぬきの夢」うどんテイスティング・・・グルテン添加の効果

f561一般的な小麦粉の栄養成分は、画像のように炭水化物が75%、タンパク質が10%、水分が14%となっています。炭水化物=糖質+食物繊維という関係、また小麦粉の糖質はでんぷんであることを考慮すると、小麦粉については、炭水化物≒でんぷんと考えて差し支えありません。また小麦粉に含まれるタンパク質はほとんどが小麦粉特有のタンパク質であるグルテンです。

改めて言うまでもありませんが、グルテンは小麦粉を塩水と一緒に捏ねることで、小麦粉に含まれる固有のタンパク質であるグリアジンとグルテニンから作られます。グリアジンは、鳥もちのようなネバネバとした粘性を、またグルテニンはゴムのような弾性を持つため、グルテンはその両方の性質を兼ね備えた粘弾性を保有します。小麦粉生地を自由に成形することができるのも、ゆでる前のうどんが切れずに繋がっているのも、このグルテンの粘弾力つまり「つなぎ力」のお陰です。

f561_2ただ小麦粉に含まれるグルテン量は、小麦の種類によって異なります。小麦粉はタンパク質の多い順に、強力粉>中力粉>薄力粉と名前がついています。よって強力粉は薄力粉よりも、より大きな「つなぎ力」を保持します。また一口にグルテンといっても、伸展性に優れたもの、弾性の強いものなど、小麦の種類によってその声質は異なります。よって含まれるグルテン量が同じであっても、うどんを打つときに延びやすい小麦粉、繋がりやすい小麦粉、粘りの少ない小麦粉など、小麦の種類によって違いがあります。

そこで逆転の発想として、小麦粉からグルテンだけを抽出して小麦粉に添加してやると、また違った製品になることが想像できます。小麦粉から抽出された粉末状のグルテンは、一般的にバイタル・グルテンいわゆるVG(Vital Gluten)と呼ばれています。そしてこのVGを添加することで、小麦粉100%とはまた一味異なる製品を製造することができます。そこで今回は、「さぬきの夢」にこのVGを添加したうどんを製造し、どのように違うのか比較してみました。

今回使用したVGは、真空冷凍凍結法という製法によって抽出された小麦グルテンです。少し高価ですが、真空凍結乾燥(フリーズドライ)するため、熱変性による網目(分子)構造の破壊がなく添加物、薬品等も使用しないため自然のままのグルテン効果が得られるという優れものです。①小麦粉100%、②小麦粉にVGを1%添加、③小麦粉にVGを2%添加の3種類のうどんを試作し、その効果を比較してみました。尚、今回は10%濃度の塩水を使用し、加水率はそれぞれ46%、46%、48%で試作しました(グルテンは水分をより吸収するので2%添加に対しては多めに調整)。

f561_3画像では3種とも全く同じに見えますが、食味試験をするとその違いがよくわかります。ゆで直後の状態では、3種とも「さぬきの夢」特有のほのかな甘味を呈するうどんに仕上がりました。ただ③はVGの添加量が多いせいか、少しうどんの食感がしっかりしすぎるように感じたので、評価は「◯」となりました。違いが顕著に現れたのは茹で後30分経過後の比較です。①(VG 無添加)は若干の茹で伸びが感じられたのに対し、②(VG1%添加)はほとんど食感の劣化が見られず、高評価でした。また③(VG2% 添加)は、添加量が多すぎたのか、若干その硬さが気になりました。

使用するVGによっても結果は異なるでしょうが、今回は②(VG1% 添加)が一番、茹で後の劣化防止に効果があるという結果になりました。うどん店によっては、茹で後の麺質劣化が気になるために30分経過した麺は廃棄処分にするところもあると聞きますが、もったいない気もします。こういったVG添加による方法も一案かと思います。

とりあえずうどん画像だけをアップ

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