#563 2017年製粉講習会・・・変化する原料事情と消費動向

f563例行事となった製粉講習会が今年も開催されました。これは世界の小麦並びに製粉業界の過去一年間を振り返り、主要な出来事をコンパクトそして分り易く説明してくれる貴重な講習会です。講師はお馴染みの小麦粉博士こと長尾精一先生。「今年もこうやって、皆さんの前でお話をすることができて嬉しいです」という御挨拶で始まるお話にはいつも元気を頂きます。今年はめでたく81歳を迎えられました。

そして何より我々が嬉しいのは、日本の製粉産業の第一人者である先生が、自ら粉食生活を実践され、同時にご自身で快適な健康生活を送られているという事実です。昨今は、糖質制限を始めとする様々なダイエット法が提唱され、中には少し極端なものもあるように感じます。しかし先生が実践されているのは、ごく標準的な小麦粉を基本とした食生活です。要諦は食べ過ぎず、適度な運動を行い、規則生活を実践することに尽きると思います。

さて今回も講習会の内容を、気になった点を中心に独断でご報告いたします。今年の小麦の収穫量は7.5億tを超えそうな勢いで、4年連続7億t超は間違いのないところです。この内食用に回るのは、4.93億tとなり、世界人口73億人で割ると、一人当りは67.5kg。これはうどん玉に換算すると毎日1.5玉を消費していることになります。ただ小麦の生産量は、ほぼ限界に近づきつつあります。

7.5億tの小麦のうち、貿易に回るのは全体の22%にあたる1億6800万t。2016/17年の予測では、輸出国は、輸出余力が大きい順に、①ロシア(2850万t)>②EU(2590万t)>③アメリカ(2570万t)>④オーストラリア(2300万t)>⑤カナダ(2100万t)>⑥ウクライナ(1500万t)>⑦カザフスタン(890万t)>⑧アルゼンチン(870万t)。そしてこれら8ヶ国の合計は1億5670万tとなり、これで世界全体の輸出量の90%以上を占めます。

小麦の主要な輸出国は、ロシア、EC、アメリカ、オーストラリア、カナダといったところで、日本は毎年アメリカ、カナダ、オーストラリアから500万tを輸入しています。とくにこの3カ国は、輸出能力もさることながら、小麦の品質は世界のトップクラスで、私たちは毎年世界最高品質の小麦粉製品を享受できることは幸せです。一方、輸入地域は、多い順に、①極東アジア(5300万t)>②アフリカ(4860万t)>③近東アジア(2410万t)>④南アメリカ(1460万t)>⑤北・中アメリカ(1160万t)と続きます。

毎回話題に登ることですが、小麦の耕作面積はほぼ限界に近づきつつあるといのは、専門家の共通した意見です。そして現在の人口増に対応するには、もはやGMO小麦(遺伝子組換え小麦)の登場は時間の問題であるという意見も多くみられます。実際、アメリカではトウモロコシの89%、大豆の94%、綿花の91%が既にGMO作物であり、GMOなしには昨今の気候変動には、対応できないといいます。つまり私たちは知らず知らずのうちに、既にGMO大豆を消費していることになります。

また最近グルテンフリー食をいう言葉もよく耳にしますが、これはグルテン(小麦粉固有のタンパク質)を含まない食品のことを指します。Mintel社が2015年12月にアンケートをとったところ、現在アメリカ人の25%がグルテンフリー食を利用するとの結果でした。その理由の内訳は、「健康に良い(36%)、グルテンは健康に良くない(16%)、健康管理者によるアドバイス(11%)、減量目的(19%)」といったものでした。しかし実際のところグルテンフリー食が健康に良いという根拠はありません。むしろ逆にグルテンフリー食品は、小麦粉のもつ食味や食感をだすために、ガム、増量剤、澱粉といった多種類の副材料や添加物を使用します。その結果脂肪やカロリーが多くなり、栄養バランスが崩れ、体重増になることがあるので、注意が必要です。

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