#571 下川うどん・・・日本最北端の手延うどん
恥ずかしながら「下川町」という町名は存じ上げませんでした(恥)。旭川市ならおぼろげながら思い浮かべることはできますが、名寄市になると聞き覚えはあってもその場所は見当がつきません。北海道のほぼ中央に位置する旭川から北方80kmに名寄市は位置し、そこから東方20kmに「川上郡下川町」はあります。下川町は人口3,383人(@H29.5.1)の小さな町ですが、製麺所が10軒程度点在し、ここで日本最北端の手延うどんが製造されています。
香川県は人口97万に対しうどん店は約700店舗と言われているので、うどん店1軒当りの人口は1,400人程度になります。一方、下川町は1軒当り300人程度となり、うどん県よりもずっと製麺所の密度が高いことがわかります。しかも下川町では毎年2日間に亘り「しもかわうどん祭り」なるものが開催され、「手延うどんつかみどり」、「手延うどん早食い競争」、「うどん早食い競争二人羽織」といった催し物が盛大に実施されているので、うどんに対する情熱は香川県に勝るとも劣らないかも知れません。
そもそも「なぜ下川町で手延うどんなのか?」と、そのルーツを辿ってみると、冬場の余剰労働力の活用にあったようです。昭和45年には、手延素麺生産量日本一を誇る兵庫県たつの市に出向き、手延の技術を習得し、それを下川町に持ち帰り現在の「下川うどん」ができました。そして現在では、単なる国産小麦ではなく、下川町産小麦を使用し、地産地消を実践しています。
さて前置きが長くなりましたが、下川町特産の手延うどんを試食。袋から取りだした乾麺は、ほんのりと飴色を呈し、手延独特の不揃いの形状が印象的です。12~13分でゆであがり、釜抜きでいただきました。舌触りはつるつる滑らかで、喉元をするりと通過します。よく熟成の効いたうどんは、噛んだ後一呼吸遅れて、口内に淡い甘みが拡がります。丁寧に延ばされた麺には雑味がなく、すっきりとした味わいに仕上がっています。うどんに限らず一般に美味しく感じるのは、強い食味ではなく、雑味が入らず素材そのものの味だけがストレートにすっきりと感じられる場合だと思います。
実は、今回試食した下川うどんは、下川町からいらしたMさんから頂戴しました。Mさんによると、下川うどんは従来地元での消費が主でした。しかし近年人口減による過疎化が問題化しつつあり、その結果需要も漸減傾向にあるため、地域おこしや地域活性化を図るためのヒントを求めて、同じうどん繋がりで香川県にやってきたとのことです。実際、50年前の昭和40年(1965年)には14,210人だった町の人口は、なんと1/4にまで減少しています。おいしいうどんであるにも拘らず、需要が増えないというジレンマに悩んでいます。
程度の差はあれ、事情は香川県も同様です。2017年現在97万人の人口は、25年後の2040年には77万人にまで減少すると予想されています。人口減少は全国の地方共通の悩みです。香川県は「うどん県、それだけじゃない香川県」をキャッチコピーに、周遊人口が流入しやすい環境づくりに取り組んでいます。香川県には、うどん以外にも手延そうめん、オリーブ、和三盆、しょうゆ豆、盆栽などの特産品が沢山あります。しかしまずはさぬきうどんの持つ吸引力で観光客にきてもらい、そこで更なる香川の魅力を知ってもらおうという作戦です。
今年のGWも、県外からは沢山の皆さんにうどんツアーにきて頂き、感謝の念に耐えません。私たちはうどんファンの人たちの期待に応え続けるためにも、これから更にさぬきうどんの魅力を高めていかなければならないと感じています。