#579 うどんテイスティング・・・全粒粉うどんPart2
#575では「全粒粉干しうどん」をテイスティングしましたが、その結果を簡単に復習しておきます。微粉砕ふすまを「5%添加」と「10%添加(全粒粉相当)」した乾麺のうどん2種類を試食。食味テストの結果はどちらも雑味となる「ふすま臭さ」は気にならず、素直に小麦の風味として感じました。特に後者は10%ものふすまが入っているにも拘らず、違和感はありません。そこで今回は次の2種を用意し、手打ちうどんで再びテイスティングしてみました:
①標準品(小麦粉100%)
②全粒粉(小麦粉90%+小麦ふすま10%)
【加水率】
①の加水率は48%(塩水濃度12%)、そして②の加水率は53%(同塩水濃度)と①より5%多くしました。②については、48%加水も試してみましたが、なかなか生地がまとまらず、延ばしたときに周辺部がひび割れを生じました。それで今回は、5%多い53%加水にしたところ、丁度良い感じで延びました。②に対し加水を多くする理由は、小麦ふすまにあります。使用した小麦ふすまは熱処理をしているため水分が1.3%と小麦粉の14%に比べ極端に低く、それだけ多く吸水するからです。
【延ばし工程】
①は通常のうどんなので、全く問題なくきれいに延ばすことができました。一方、②は①と比較すると、加水量アップにも拘らず、生地の表面が粗く、周辺部分に若干のひび割れが生じました。これは両者の生地に含まれるグルテン量の違いが原因です。ゆでる前のうどんが繋がっていることができるのは、生地中に含まれるグルテンの「粘弾性」をお陰です。つまりグルテンが多ければ多いほど、うどんは切れにくく、そして繋がり易くなります。しかし小麦ふすまにはグルテンが含まれないため、小麦ふすまの量を多くするほど、相対的にグルテン量が減少し、その結果繋がりにくくなり、ひび割れを起こしやすくなります。
【ゆで工程】
①のゆで時間13分に対し、②は①よりも2~3分早くゆであがりました。②のゆで時間が短縮された理由は、小麦ふすまの部分が予め熱処理されているため、全体としてゆで時間が短縮されたのであろうと、推測します。このゆで時間の短縮は、作業工程上のメリットになります。
【食味試験】
①は通常の手打ちうどんなので、改めてコメントしません。一方、②はグルテンが少なく、そして小麦ふすまが入っているせいか、粘りが少なく、モッチリ感に欠けますが、食味自体は決して悪くありません。どちらかというとパサパサとした食感なので、乾麺向きかもしれません。(#575)と重複しますが、小麦ふすま特有の「臭い」が気にならない理由は、大きく2つあると思います。一つは大きなふすま片だけを使用したため、雑味がなくなったこと、そして二つ目は微粉砕することで、食感が改善され、「イガイガ感」がなくなったことです。
【全粒粉うどんの可能性】
現代は、飽食の時代の真っ只中です。美味しいものを好きなだけ摂取したいという欲求がある一方、生活習慣病にはなりたくないという一見矛盾したとも思える要求もあります。森谷敏夫先生が提唱する森谷式「炭水化物摂取ダイエット(#564)」のエッセンスは、「(1)定期的な運動を実践しできる限り基礎代謝の低下を防ぐ。(2)糖質は必要量摂取し、脂質はできるだけ控える。(3)日常から少しでも身体を動かすクセをつけエネルギー消費を図り、また毎日僅かでも余分な摂取を控える地道な積み重ね」という3本立てが基本です。
(3)に注目すれば、毎日コーヒー用砂糖小さじ1杯(5g=19kcal)を制限すれば1年では6935kcalとなり、これは1kgの脂肪=7200kcalに相当します。つまり毎日小さじ1杯の砂糖でも、塵が積もって大きな効果となります。同様にうどん一杯でも10%の糖質をカットすることができれば、その長期に亘る効果はかなりのものになると期待できます。そういった意味で、全粒粉うどんは、可能性を感じさせるおうどんのような気がします。