#580 うどんテイスティング・・・1年前の小麦粉 vs. 標準品
思うところがあってか、最近営業部門では頻繁にうどんの試作をおこなっています。そして今回は製粉後1年経過した小麦粉を使ってうどんを打ってみました。実は営業部の管理物件の中になんと1年前の小麦粉が見つかりました。I君は普段から「清潔好き」を自認し、家庭でも掃除を率先して行っているそうですが、なんとそのI君の管理物件から1年を経過した小麦粉がでてきたことは少しショックでした。しかし折角の機会なので、その小麦粉でうどんを打ってみることにしました。
【小麦粒と小麦粉の熟成】
収穫された小麦は、数ヶ月保存した後、製粉すると加工適性が向上します。これを「小麦の熟成」といいます。収穫直後の小麦粒の中では各種酵素の活性が強く、不安定な状態にありますが、それをしばらく寝かせることで、状態が安定します。米や蕎麦については、新米、新蕎麦といわれるように新しい方が好まれるので、小麦も一見「新小麦」が良さそうに思えます。しかし実際は、小麦に限っては事情が少し異なります。
一方、製粉後の小麦粉についても、暫く寝かせることを「小麦粉の熟成」といいます。ただこの小麦粉の熟成については、意見が分かれるところで、「熟成は不要」、「数日間で十分」、「1ヶ月は必要」など様々です。一般的には小麦粉の熟成期間は昔に比べると短くなる傾向にありますが、これは製粉方法の違いが一因と言われています。現在の製粉工場内においては、「空気搬送方式(ニューマ方式)」が採用されているので、小麦粉はすべて空気の流れにより搬送されます。
つまり小麦粉は空気の流れにのって搬送されることで強制的に「酸化」が進み、小麦粉になった時点で、熟成は完了しているという考えです。実際弊社でも製粉直後の小麦粉を使用し、これまで何度もうどんを打ったりパンを焼いたりしていますが、これまでのところ問題が生じたことはありません。よって小麦粉での熟成は必要ないという考えを支持しています。またもし仮に必要だとしても、ユーザが小麦粉を実際に使用するまでには、数日間は要するので、その間に熟成は進むため問題はありません。つまり小麦粉は新しいほど良いと考えます。
【加水率及び塩度】
両者同一条件:塩度12度、加水率52%
【作業工程】
加水率は少々多めの52%で作業しましたが、両者共に問題はなく、作業はスムーズに進みました。ただ①の生地はきれいな淡黄色であるのに対し、②は少し白っぽい仕上がりとなりましたが、これは酸化によって起こる自然漂白作用によるものです。
【食味試験】
両者ともゆで時間は13分。①は生地の状態同様、きれいな淡黄色であるのに加え、弾力感を感じるうどんに仕上がりました。一方、②は生地同様、やや白っぽいうどんとなりましたが、食味的には全く問題なく、一同びっくりでした。
【まとめ】
試作前の予想では、「②1年経過の小麦粉」で打ったうどんは、かなりの劣化がみられると予想していただけに、この結果には正直驚きました。これは推測ですが、予想外の良好な結果となった要因は、未開封のラミネート袋に保存していたからだと考えます。つまり1年間気密性が保たれ、保存状態が良好であった結果です。
しかし一般的には、購入後1年間未開封というケースは考えられず、一旦開封するとそこから劣化が始まります。小麦粉はその性質上、湿気や臭いを吸着しやすく、また衛生害虫の被害に遭うことも想定されるため、特に高温多湿の夏場は取扱いに注意が必要です。よって今回はレアケースだと考えています。ということで小麦粉は、開封後はできるだけ、早く使い切るようお願いいたします。