#581 観光客が香川県を選ぶ理由
学生時代に「出身はどちらですか?」と聞かれ、「香川県です」と答えると、「かながわけん(神奈川県)?」と聞き違えられることがありました。そして改めて「かがわ県です」と返答すると、訝しそうな顔をされました。今でも「香川県」の認知度はそれほど高くはなく、「さぬき」もしくは「さぬきうどんの香川県」と言った方がすんなり受け入れられるようです。先日(2017.07.16)の地元紙に、香川県が2016年度に実施した観光客の実態調査が掲載されました。
香川県では2016~17年にかけて「栗林公園(りつりんこうえん)」や金刀比羅宮(ことひらぐう)といった県内の主要観光地10ヶ所において聞き取り調査を実施。回答者4094人のうち71.9%の2945人が県外からの観光客、そして「観光客が香川県を選ぶ理由」については、「讃岐うどんが目的」が堂々の1位となり、改めて讃岐うどんの人気が実証されました。関係者の一人として感謝の念に堪えません。アンケート結果は次の通りです:
(1)讃岐うどんを食べる・・・40.1%
(2)歴史的な神社仏閣を見る・・・31.8%
(3)海や島など豊かな自然に振れる・・・23.2%
(4)屋島、栗林公園、琴弾公園などの名所見学・・・18.9%」
(5)アクセスが便利・・・18.7%
(6)レジャー施設・・・17.9%
香川県にはうどん以外にも、観光客の方々にみていただきたいものは沢山あります。特に最近は2010年から3年毎に開催されている瀬戸内国際芸術祭も認知度が高まり、アート県としても存在感を高めつつあります。しかしやはり№1といえば、「さぬきうどん」になります。「うどん県。それだけじゃない香川県」というキャッチコピーには、「まずさぬきうどんで香川県に来ていただいて、その他にも沢山ある観光資源をみてもらいたい」という気持ちが込められています。
県外からの観光客のうち、うどんを食べた人は77.4%に上り、訪れたうどん店は平均1.49店でした。複数店舗訪れた観光客は30%以上で、「単にさぬきうどんを食べる」たけでなく、更に進んで「うどん店巡りを楽しむ」観光客がかなりいることがわかります。「大変満足」、「満足」、「やや満足」を併せた香川観光の満足度は88.2%、そして91.9%が再来訪を希望しています。つまり香川観光についてはまだまだ「花より団子」状態かも知れません。
では観光客のみなさんが「うどん店巡り」に期待するものはなんでしょうか。もちろんおいしいコシのあるうどんに違いありませんが、それだけではありません。多くは色んな変わった特徴のあるうどん店巡りを体験し楽しみたいのです。「一杯100円のうどん」、「麦畑を眺めながら食べるうどん」、「橋のガード下のうどん」、「自分でネギを切るうどん店」など、そのうどん店でしか体験できないようなうどん店巡りを期待しているのです。一言でいうと「さぬきうどんの多様性」を楽しむためにわざわざ讃岐までやってくるのです。
現在、香川県にはおよそ700店のうどん店があると言われていますが、かつては製麺所を兼ねたうどん店も含め3000店以上ありました。時代と共に小さな製麺所は淘汰され、うどん店舗の大型化が進んだ結果、かつての1/4ほどになりましたが、それでも人口当りのうどん店密度はもちろん日本一です。ただ喜んでばかりもいられません。実はうどん県においても複数店舗を構えるうどん店が目立つようになりました。
うどん店巡りが目的の観光客は、いくらおいしいうどんでも、同じ系列店のうどん店なら、1度しかいかないでしょう。いくらコシがあっておいしくても、同じおうどんだからです。つまりうどん店の数は700店であってもその種類となると、かなり少なくなります。そして最近の傾向としては、家族経営の特徴あるうどん店が廃業するケースが目立ち、うどん店の多様性が薄れつつあるように感じます。何とかこの辺で、今一度独立店舗の奮起を促し、更に「うどん店巡り」を活性化させてほしいと願うばかりです。