#595 製粉工場見学@熊本製粉
千葉製粉さん(#593)に引き続き熊本製粉㈱さん(以下熊本製粉)を見学する機会に恵まれました。熊本製粉は千葉製粉さん同様、製粉大手4社に次ぐ準大手で、挽砕量ではトップ10に入る製粉会社です。沖縄製粉を除けば日本最南となる熊本県に位置します。JR鹿児島本線の熊本駅から一駅北寄りに上熊本駅があり、この上熊本駅に隣接して熊本製粉の広大な工場群(製粉部分5,000坪+倉庫部分7,000坪)が立地します。そしてここから有明海のある西方には、標高665mのカルデラ式火山である金峰山を望むことができます。
熊本製粉は、1947.5、故石橋正二郎氏が東京都飯倉片町にて創業。翌1948.1に熊本工場が完成し、操業を開始、その後本社を熊本市に移転します。石橋正二郎氏といえば、聞き覚えのある方もいらっしゃるでしょう。そうです、あの世界に冠たるタイヤメーカー・ブリヂストンの創業者であり、その社名の由来は余りに有名です。石橋氏は「張り付け式ゴム底足袋」いわゆる地下足袋の考案者としても有名ですが、戦後の食糧難を解消すべく、この九州の地に製粉会社を興しました。そしてその熊本製粉も今年の5月(2017.5)に70周年を迎えました。
現在、熊本製粉は年間約7万5千tの小麦を製粉していますが、その内訳は地元の小麦であるシロガネコムギを1万5千t、そして輸入小麦が6万tです。一般の方々の馴染みは薄いようですが、熊本県は九州では、福岡県、佐賀県に次ぐ小麦の産地です。主力の輸入小麦は博多港に陸揚げされるため、上熊本から博多までの道程100kmを毎日トレーラーで小麦300tを搬送しています。自然災害等のトラブルが発生し、輸送ルートが遮断されると、翌日は2倍の小麦を搬送することになり、そのやり繰りが大変とのことでした。
大工場だけに中小製粉にとってはすべての設備が垂涎の的ですが、特に「Bears技術センター」なる4階建ての研究開発棟は「素晴らしい」の一言に尽きます。1Fはパン・菓子の研究グループ、2Fは麺・冷凍食品の研究グループ、3F は分析・品質保証部、そして4Fが講習会場及び会議室となります。ここでは総勢35名のスタッフが研究開発に従事し、中小製粉にとっては到底真似することができない理想的な研究開発環境です。
熊本製粉は、現在極めて順調に操業されていますが、問題がなかった訳ではありません。ご存知のように昨年は震度7を超える熊本地震(2016.4.14)が発生し、熊本製粉も甚大な被害に遭いました。シフターが落下、倉庫の製品群は倒壊、そして配管の破裂により、工場は緊急停止。しかし社長を始め、全社一丸となり復旧に努めた結果、僅か11日後には再稼働することができました。これも普段からの災害に対する備え及び準備力があればこそ可能であったとお聞きしました。
見学当日は、年内完成を目指し、6,000t収容の小麦サイロの建設工事が急ピッチで進められていました。これは地震による液状化現象により旧サイロの耐震性が維持できなくなったためです。一口に6,000tといいますが、間近でみるとその存在感に圧倒されます。大規模投資が困難な中小製粉にとっては、誠に羨ましい光景でした。大きな試練を乗り越えられた結果でしょうか、工場内では皆さん余裕を持ち生き生きとお仕事をされている印象を受けました。貴重かつ有意義な経験をさせていただき、熊本製粉宮本貫治社長様を始め、関係者一同の皆様にはこの場をお借りして深くお礼申し上げます。
最後になりますが、熊本といえばなんといってもくまモン。駅の改札口では巨大なくまモンが熱烈歓迎。宿泊したホテルのロビーでも可愛いくまモンが二頭、ソファに座っていました。こちらのくまモン、なんと朝起きると動いていました。