#598 初めての釣り堀
今年も残すところ半月となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。会社の事務所に「麺棒を叩いて廻す十二月」という俳句があります。今年もこの季節になったと実感します。昔は、暮れになるとどこのうどん屋さんでも、慌ただしくうどんを打っていました。この句を眺めていると、そんなうどん屋さんのムンムンとした熱気が、臨場感豊かに伝わってきます。さて今年最後のイラスト担当者による新着情報をお届けします。
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東京のJR市ヶ谷駅のホームに立って辺りを見下ろすと、近くに釣り堀があるのが見えます。電車の中からでも目に止まるので、ご存知の方も多いでしょう。ここは以前から気になっていたスポットで、先日、意を決して友人と二人で釣り堀体験ミニツアーを決行しました。屋外にあり、なかなか年季の入ったアットホームな釣り堀です。大きな生簀には鯉が、また隅の小さな生簀には金魚が泳いでいます。
受付で竿とエサをもらい、とりあえず1時間体験をすることにしました。休日のお昼時、ぽかぽかと天気も良かったためか、場内はそこそこの賑わいを見せていました。マイ釣竿を揃えている強者から、父子でワイワイやっている姿まで、様々です。釣った鯉はとりあえず網にキープしておき、帰り際にリリースするシステムです。生簀の近くに秤があり、リリース前にそこで重量を計測し、その日の釣果を確認することができます。
さて肝心の釣果はというと、私も友人も1時間で2匹ずつというトホホな記録でした。ただ最初の15分はエサをつける作業や絡まったテグスを修復するのに手間取り、実際に釣り糸を垂らしている時間は短かったので、そんなもんかもしれません。それより実際に竿をたらして待ってる時間は思った以上に退屈で、その待ち時間をぺちゃくちゃ話しながら潰す様は、カフェでいる時と大して代わり映えしません。しかし田舎に住んでいる、釣りが趣味という知り合いのおっちゃんは、「なんちゃ釣れんでもかまへんのや。ただ海を見ながらぼ~っとしよるんが最高なんや」といいます。人の趣味や感覚はそれぞれ異なることを改めて実感しました。
鯉の方は、すっかり生簀での生活に慣れきってしまっているのか、水面から顔を出して口をパクパクさせています。こうしていれば、エサをもらえると思っているのでしょうか。「全く緩い生活だな〜」と友人と話しながら、思わず休日は引きこもってダラダラしている自分の姿がかぶってしまい、「私はイケスの鯉と同じか」と少し落ちこみました。
ようやく一匹釣れ、例にならって網にキープしていたのですが、捕まった鯉は群れに戻りたいのかバタバタと抵抗していました。暫くすると急に大人しくなりましたが、その姿がなんだかとても可哀想に思え、すぐにリリースしてやりました。釣り堀の鯉たちは、一生をこの生簀の中で過ごすのかと思うと、なんか友人共々、鯉の人生に虚しさを覚え、またまた落ち込みました。
体験する前は、意気揚々と向かい、魚をどんどん釣り上げる快感でリフレッシュするつもりが、帰り際には何ともブルーな気持ちになったのは誤算でした。ただ釣り堀を離れた瞬間、「これが海だったら、もっと楽しめたのかもね。」、「アジにタイにカレイに…色々釣りたいなあ」、「お刺身で食べたら美味しいんだろうなあ…!」などなど、生簀の鯉のことなどすっかり忘れてしまい、普段の私たちに戻っていました。
皆さん今年も一年間お付き合いいただき、誠にありがとうございました。来年もどうかよろしくお願いいたします。それではどうか良い年をお迎えください。