#606 かおるちゃんのさぬき日記②
かおるちゃんにとって、初めてのさぬき旅行初日は散々な結果に終わったので、二日目はうどん県の名に懸け、何が何でも満足してもらう必要があります。そこで事前に地元の友人二人の協力を仰ぐことにしました。協力といっても、実際はアッシー君とそのヘルプです。少中学時代の同級生の山城くんと洲崎くんは、帰省する度によく一緒に遊んでもらっています。アッシー君だからと言うわけではありませんが、どちらもとっても性格が素直で人当たりが良いのです。尤もそれでずっと仲良し関係が続いているわけです。
さて必勝を期して立てたスケジュールは、「金毘羅さん参拝→うどん屋さんA→うどん屋さんB→栗林公園→19:54JR坂出発マリンライナー」というありふれたものになりました。金毘羅さんも栗林公園も香川観光では絶対に外せないスポットですが、地元の人達は普段はまず行きません。そもそも観光地というのはどこもそんなもんじゃないでしょうか。偶に知人が遠方より来たりて、一緒にいき、「あーよかったね」というのが観光地ですね。
10時に家を出発し、11時には金毘羅さん到着。参道には、たくさんのお土産屋さんや飲食店が軒を連ねていますが、ここでのんびりすると予定が消化できません。私たちは他の観光客をかき分け、ズンズンと階段を登って行きます。そういえば丁度1年前にも友人と金毘羅さんを登ったのですが、その時は、しんどかったことしか記憶にありません。しかし今回は、使命感のせいか疲れを感じる暇もなく一気に本宮まで登りつめました。帰り、かおるちゃんが「少しお土産屋さんを見ようよ!」と言って、食いついたのが参道脇にある「金陵」の酒屋でした。金陵は江戸時代から続く、香川の地酒です。重たいから控えめに、と言っておきながら、かおるちゃんはここで一瓶と二缶を購入。
時間はあっという間に13時となり、ちょうどお昼の時間になりました。地元勢の3人は全員が坂出市に住んでいるため、金毘羅さん周辺のうどん屋にはあまり馴染みがありません。そこでスマホ検索で、点数の高いお店に行くことにしました。この後栗林公園にもいくので、あまり時間をかけたくなかったのですが、「できればうどん屋2軒は行きたいなあ…」とボソッと主張してくるかおるちゃんの意見は絶対です。
というわけで、1軒目は釜揚げうどんが有名なAうどん店へ。到着すると、お店をぐるっと囲むような長蛇の列。なんとここで1時間待ち。普段うどん屋さんで待つことは想定していない私にとっては、理解しがたい状況でしたが、全てはかおるちゃんへの「おもてなし」のためです。空腹に加え、寒い屋外で待ち続けたおかげで、熱々の釜揚げうどんがより一層美味しく感じられました。しかし滞在時間はたった15分。この釜揚げうどんの興奮も冷めやらぬ内に、すかさずBうどん店に直行。
ここで私は冷ぶっかけ、かおるちゃんは温ぶっかけを注文。私は個人的には、麺がキュッと締まった冷たいうどんが好きなので、冬でもよく注文します(もちろん母親には呆れ顔で見られます)。かおるちゃんに「ほらね、温と冷、食べ比べてごらん。冷の方が、麺が締まってダイレクトにうどんが感じられるし、ツユも甘くて旨いやろ?」と自論を熱弁すると、素直なかおるちゃんは「本当だね!次回からぶっかけを注文するときは絶対に冷にしよう!」と言ってくれました。かおるちゃんのうどん愛が、更に高まった瞬間でした。
それにしてもです。改めてしっくりしないことが一つあります。一時間も並んで食べる釜あげうどんは確かに美味しいと思います。しかし、さぬきには並ばなくとも、ここに負けない釜揚げうどんが他にいくつもあります。つまり「行列の長さは、必ずしもうどんの味」に比例しないと思うのです。かおるちゃんと一緒にうどん屋巡りをしながら、ふとそんな疑問が湧きました。お土産は存分にゲットした筈なのに、かおるちゃんはJR坂出駅でも更にうどんを買い込み、満足そうに帰っていきました。