#608 ゆで太郎システム

f608ゆで太郎というユニークなネーミングの会社をご存知でしょうか。挽きたて、打ちたて、茹でたての「三たて」をモットーに、高品質のそばを安価に提供することで、最近首都圏を中心として店舗数を増やしている、セルフのそばチェーン店です。

運営形態もユニークで、直営店は信越食品㈱(水信春夫社長)、そしてFC店(フランチャイズ)は、㈱ゆで太郎システム(池田智昭社長)が運営しています。現在、両者の店舗数は、ほぼ同数で、今年中に両者併せて200店舗を達成します。先日、池田智昭社長様からその軽妙な語り口による会社運営のお話を伺う機会があり、興味深い内容でしたので、簡単にまとめてみました。

会社のコンセプトは、ずばり「街のそば屋の品質をセルフの価格で提供」するファストカジュアル。ファストカジュアルとは、高品質メニューを廉価で提供すること、つまり一般店の品質をファースト・フード店のコスパで提供する新業態です。簡単に言うと「良いものを安く」提供することですが、これをそばの業態に落とし込んだのが、ゆで太郎のシステムです。具体的にどうやって実現されたのか、理解した範囲でご説明します。

【高品質そばの提供】
現在、麺類として販売する場合、蕎麦と名乗るには少なくとも原料中に30%以上の蕎麦粉を含む必要があります。一方、そば屋として販売する場合には、蕎麦粉比率の規定はありません。一般に高級蕎麦店では、蕎麦粉100%使用の「生そば」や80%使用の「二八そば」を提供し、街のそば屋では50%使用の「同割」が一般的です。また立ち食い・セルフそば店では、コストの制約上蕎麦粉の使用比率は更に低い30~20%が一般的ですが、ゆで太郎では、同割よりも更に5%多い55%の蕎麦粉を使用します。池田社長によると、この+5%がゆで太郎のこだわりです。

また三たて(挽きたて、打ち立て、茹でたて)を実現するために、そばは全て自家製麺。つまりセントラルキッチンや工場は持たずに、基本的には街のそば屋さんと同じ方式で、各店舗に製麺設備を設け、高品質の蕎麦を原料の粉から作ります。

【ファストカジュアルのコスパ】
250gのもりそばを320円で提供(大盛券は+100円)することで、お客様に感動をご提供できると池田社長は断言します。一般には一食500gを摂取すれば満足感が得られると言いますが、もりそばはつゆと併せて、この満足感を提供します。顧客の主力である30~50代男性の再来店頻度が高い事実が、この満足感提供の証左です。バブル当時は平均850円であった昼食代は、現在は600円までに下降しましたが、ゆで太郎の客単価は450~460円と、更にコスパが向上しています。

綺麗で清潔な店内】
どんなに美味しいお蕎麦も、店内が雑然としていては美味しさ半減です。ゆで太郎はいつも快適な店舗を提供し、蕎麦の美味しさをいっそう引きたてます。

【FC店のメリット】
FC店は増えるほど、スケールメリットが増大します。各店の膨大な情報を本部に集約し、それを分析し各店舗にフィードバックすることで各店の最適化を図ります。また本部では常に商品開発部が新メニューを開発するので、各店舗は日常業務だけに注力することができます。

現在、飲食店チェーン業界においては、様々な業種が既に存在します。そしてご存知のようにうどん業界では、大規模に展開している会社が既に存在しています。一方、蕎麦業界については、まだまだ流動的で、ゆで太郎が頭一つでているような状況です。今後、ゆで太郎がどのように展開、そして飛躍されるのか注視していきたいと思います。