#613 そば・うどん店市場規模の推移
「そば・うどん店の実態と経営改善の方策」という興味深いレポート(全50頁)が、厚生労働省のサイトにアップされていました。ざっくりと読んで、気になった点を簡単にまとめてみました。
【1.外食産業の中での「そば・うどん」市場の位置づけ】
まず、そば・うどん店市場が外食産業全体の中で、どのような位置づけにあるのがご説明します。次の表は、平成28年の外食産業全体の市場規模の推計値です。普通、外食産業といえば、「飲食店」、「喫茶店・居酒屋等」、「料亭・バー等」くらいしか思い浮かびませんが、実際にはこのように多岐に分類されます。
外食産業の市場規模は全体で、25兆円4169億円。これが給食主体部門(20兆3519億円)と料飲主体部門(5兆650億円)に大別されます。そしてそば・うどん店は、給食主体⇒営業給食⇒飲食店⇒そば・うどん店(1兆2397億円)となります。そば・うどん店の市場規模は、外食産業全体の中では12,397/254,169≒4.88%となります。
【2.そば・うどん市場の動向】
次に外食産業全体とそば・うどん店市場のこれまでの推移を示したのが、次のグラフです。左目盛が外食全体の市場規模、右の目盛がそば・うどん店。市場規模は1980年(14兆6,343億)から順調の右肩上がりで伸びますが1997年(29兆702億)にピークを打つと、そこから減少に転じ、2016年(25兆4,169億)は、ほぼ1990年と同水準です。
一方、そば・うどん店は、1980(5,603億)からスタートし、凸凹しながらも増加し続け、2016年(1兆2,397億)がほぼピークとなります。そば・うどん市場は、1980年(3.83%) ↗ 2016年(4.88%)と、外食産業の中では、少しずつシェアを増やしてきたことになります。両者のグラフは2000年辺りで交差していますが、これはそば・うどん市場の存在感が増していることを示しています。
ちなみに「そば・うどん店」の事業所数は、H13(35,086店) ↘ H24(31,869店)と減少しているのに対し、従業員数は、H13(211,452人)↗ H24(218,162)と増加しています。つまり1事業所当りの従業員数は、H13(6.0人)↗ H24 (6.8人)と増え、これは個人店経営の店が減少し、比較的規模の大きい店やチェーン店が台頭してきたことが推察されます。この傾向は香川県でも同様で、うどんブームを牽引してきた老舗の家族経営のうどん店が惜しまれながら閉店した事例がいくつもあります。
ところで「そば店とうどん店は、どっちが多いのか?」という素朴な疑問がわきますが、これについては、ほぼ同数であろうと推測します。例えば、(うどんvs.そば)では、そば店28,747店に対しうどん店28,006店)とほぼ同数です。ただし、ここで合計56,753店は、厚労省データの31,869店よりかなり多めではありますが、これは文字通り「そば・うどん店」と両者を提供しているお店を、両方にカウントしているのも一因かと思います。そこで、そば店とうどん店の数がほぼ同数とすれば、厚労省のデータを基にすれば、そば店もうどん店も、ほぼ16,000店ずつということになります。
【3.そば・うどん店の営業状況】
下の図12~図15から次のことがわかります。
1日平均売上 = 1日平均客数×平均客単価 = 56.7×880.6円 = 49,330円
そば専門店の1日平均売上 = 32.4×1116.1円 = 36,162円
うどん専門店の1日平均売上 = 68.7×699.9 = 48,083円
そば・うどん店の1日平均売上 = 56.9×835.9 = 47,563円
立ち食いそば・うどん店の1日平均売上 = 166.7×312.5 = 52,094円
【4.そば・うどん店の経営改善の方策】
外食産業の中では比較的検討しているそば・うどん店ですが、経営上の問題点についてのアンケート結果では、「客数の減少」が70.1%と圧倒的に多く、「客単価の減少」も26.2%あります。尤も新店は次々に登場するので、既存店の売上が漸減するのはやむを得ないのかもしれません。ただ営業形態別にみると、同じ「客数の減少」でも、専門店の方が、悩まされていない傾向が見て取れます。いずれにしても、今後ともそば・うどん店の存在感が益々アップすることを願ってやみません。