#639 段階式製粉方法⑥・・・累積灰分曲線

ロール機とシフターとの間を行ったり来たりしながら、シフターの下からは次々と上り粉がでてきます。このとき(#637)と同様、上り粉の数を50とします。そして今度は、この50種の上り粉を3~4つのグループ化に分けて、最終製品に仕上げていきます(#165)。ただこのときでたらめに配合しても意味がありません。「灰分が少ない≒色調が良好」という関係があるので、一般には上り粉を、灰分量の少ない順番に並べて、順番にグループ化します。ここでは上り粉を次のようにグレード順に番号をつけます。F01 < F02 < ・・・ <F49 < F50。

次にF01の灰分をA01そして出量をQ01とし、以下同様に名前をつけます。出量というのは、その上り粉の発生量のことで、各出量は上り粉の種類によって異なります。画像の例で説明します。F01は一番きれいな上り粉で、100kg当りの出量は7.0kg、そして灰分は0.325なので、Q01=7.0kg、A01=0.325%となります。同様に上り粉F02については、Q02=3.0kg、A02=0.333%となり以下同様です。次に累積灰分(AA)とは、各段階までの上り粉全てを混合したときの灰分です。つまりAA02は、F01とF02を混ぜ合わせた小麦粉の灰分、つまりAA02=(Q01×A01 + Q02×A02)/(Q01+Q02)となります。これはF01とF02の灰分を単純に平均したものではなく、加重平均したものになります。

また累積歩留り(AY)は、各段階までの出量の合計の全体に対する重量%になります。つまりQ01+Q02=7.0+3.0=10.0となり、これは全体の10%なので、AY02=10.0%となります。以下、全ての上り粉に対して同じ操作を繰り返します。そして横軸を累積歩留り、縦軸に累積灰分をとりグラフにしたのが、累積灰分曲線もしくは、アッシュカーブ(ash curve)です。累積灰分曲線は、灰分の少ない上り粉から、段階的に積み上げてできた曲線なので、次のような性質があります。

①初めのうちは、胚乳の中心部分が主体の上り粉なので、灰分は少なく、カーブは緩やかに上昇し、その後、徐々に上り方が大きくなる。
②累積歩留りが100%のときの累積灰分は、元の小麦の灰分に等しい。
③アッシュカーブは、最初はできるだけ低く推移し、最後に急激に立ち上がるのが良いとされる。
④小麦の種類にもよるが、アッシュカーブは、0.3%前後から始まり、最終的に1.3%程度(つまり小麦の灰分)で終わる。

繰り返しますが、各グレードの小麦粉は、この50種類の上り粉を、純度の高い順からグループ化して作られます。例えば、上位20個の上り粉(F01+F02+・・・F20)を併せて1等粉、次の10個(F11+F12+・・・F20)を併せて2等粉、という具合です。そして最後のグループは、表皮部分のみなので、飼料つまり家畜の餌になります。一等粉グループに入れるメンバーを多くすれば、歩留りは多くなりますが、欲張りすぎると全体の質が落ちます。逆に厳選し過ぎると、色鮮やかな素晴らしい小麦粉ができますが、歩留まりが少なくなるので、このあたりはバランスが必要です。

また灰分0.40%の小麦粉を作りたい場合は、縦軸の0.40を右に辿り、アッシュカーブと交差する点より左に位置する上り粉を全て混ぜ合わせればよいとわかります。一般に特等粉といわれるものは、上位グループの累積歩留りが40~45%になるように、また一等粉は、上位60~65%になるようにグループ分けします。また一等粉だけを良くすればいいというものでもありません。同時に発生する二等粉、三等粉などの用途も考慮しながら、全体のバランスが必要になってきます。各グレードの小麦粉が過不足なく販売できるのが理想ですが、現実はそう甘くはありません。足りない小麦粉があれば、余る小麦粉もでてきますが、そこは営業努力をしながら、何とか全ての小麦粉を販売しています。