#658 もっちゃんの結婚式
今年の「さぬきの夢」は、これまでのところ順調に生育しています。収穫まであと3ヶ月。このまま無事に育ってほしいと願うばかりです。さてイラスト担当者による新着情報をお届けします。
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先月、小学校の同級生だった「もっちゃん」の結婚式が鎌倉でありました。お互い大学から上京し、社会人になった今でも定期的に会う間柄です。結婚式の日程が分かったのは昨秋でした。有難いことに披露宴ではピアノを弾かせてもらえることになり、また披露宴でのBGM選曲にも参加させてもらいました。
新郎新婦と3人で何度か集まり、意見交換し合った結果、ピアノでは「Top of the World」、「瀬戸の花嫁」、「希望の轍(わだち)」を弾くことになりました。「Top of the World」はカーペンターズの曲で新郎新婦の入場曲になりました。ほぼ半世紀前の曲ですが、皆さん必ずどこかで聴いたことがあるはず。どこか素朴で、しかし温かい気持ちになれる曲の雰囲気から、披露宴が和やかなムードで始まればという思いと、中学生の頃授業で歌った思い出の曲だった、という理由から決定しました。
「瀬戸の花嫁」は新婦のお色直し入場時の曲で、言わずと知れた小柳ルミ子の名曲です。地元の香川県では、駅ホームの発車メロディとして昔から馴染みがあり、これしかない!と一番先に決定しました。「希望の轍」は神奈川県を代表するバンド、サザンオールスターズの曲です。これは新郎の地元が神奈川県ということ、そして披露宴会場からは江ノ島や江ノ電が綺麗に見えるという理由から、新郎のお色直し入場曲に決定しました。
本番を迎える迄の3ヶ月は、それまで寝る前に弾いていたギターの練習時間をほぼピアノにあて、毎晩ピアノを触りました。きちんと人前で弾くのは学生ぶりだったので、ブランクを取り戻すのに必死でした。楽譜は特に用意せず、音源をひたすら聴いて、耳コピーして弾くというスタイルでしたが、当日が近づくにつれ、自宅での練習にもなぜか緊張感が出てしまい、譜面に起こそうかと印刷までしたのですが、結局楽譜に縛られながら弾くと、どうしても伸び伸び弾けないと思い直し、ビリビリに破いて楽譜なしで挑む決意を固めました。
同じ小学校、中学校の同級生7人で、鎌倉に前泊した私たち。成人式ぶりに会う友人もいましたが、ブランクを全く感じさせない居心地の良さはさすがでした。私は前日の夜に、軽い打ち合わせを兼ねて、会場で実際のピアノを弾かせてもらいました。思った以上に会場が広く、雰囲気にのまれそうでしたが、お馴染みの顔(新郎新婦)がいてくれたおかげで、俄然安心しました。スタッフさんも気さくな方で、リハーサルがてらに曲を弾くと新婦ともども、既に目がうるうるになっていました。
そしていよいよ当日。私は緊張からか全く眠れず、7人の中で誰よりも早く起きました。そこからヘアセットのため美容院に向かい準備完了。はじめに鶴岡八幡宮で神前式が執り行われました。天候にも恵まれ、澄んだ空気の中、袴と白無垢姿で現れた二人を見た瞬間、涙が出ました。前日の夜に会ったばかりなのに、なんだか全く別人に思えるほど素敵で、私は早すぎる感動のピークを迎えてしまいました。
それから披露宴会場に移動し、いよいよ披露宴本番。直前に、譜面台を取っ払ってもらい、解放感満点で挑みました。緊張からかペダルを踏む足が小刻みに揺れるのが自分でも分かりましたが、なんとか3曲とも弾ききりました。新郎新婦の生い立ち映像や、家族への手紙など、感動する場面は盛りだくさんで、もう感無量。おまけにピアノに対するお褒めの言葉もいただき、本当に感謝しかありません。完全燃焼のおかげか、帰宅後はベッドに直行。その晩は丸々2日分の睡眠時間をとりました。
翌日目覚めると、もっちゃんから感謝のラインが届いていました。私が「昨日はお疲れ様、もっちゃんほんまに綺麗やったわ」と返信すると、「今朝、鏡見たら昨日と全く別人がおってびっくりしたわ」との返事。相変わらずやなあ、と思いながら、昨日のことが本当に夢のようでした。もっちゃん、今度は旦那さんと一緒に、さぬきうどんツアーにきてね!