#659 「さぬきの夢」製麺講習会2019
ご承知のように「さぬきの夢」は香川県農業試験場が、さぬきうどんのために開発した讃岐うどん専用の小麦品種です。香川県ではこれまでも、農林26号、セトコムギ、ダイチノミノリ、チクゴイズミといった小麦が栽培されていましたが、うどん県オリジナルのうどん用小麦がありませんでした。そこで讃岐うどん専用小麦として、2000年に「さぬきの夢2000」が登場し、2009年には「さぬきの夢2009」にバージョンアップされ、現在に至っています。
「さぬきの夢」は、香川県で開発されたオリジナル小麦の総称です。つまり「さぬきの夢2000」、「さぬきの夢2009」、そして今後登場するであろう次世代小麦もすべて「さぬきの夢」となります。初代「さぬきの夢」である「さぬきの夢2000」は、食味食感は抜群でしたが、グルテンの粘弾性がASWと比較して少し弱く、作業適性において少し難がありました。そこで二代目「さぬきの夢」においては、この作業適性が向上されました。
さて現在、うどん県では、「さぬきの夢」100%うどんを常時提供している「こだわり店」、そしてさぬきの夢50%使用の「協力店」がありますが、今回新たに「さぬきの夢・応援店」が追加されました。これは、「さぬきの夢」を自由な形で利用してもらい(よってブレンド比率は自由)、そのうどんを通年提供できるうどん屋さんが対象です。今回は、この「応援店」誕生を記念し、また更なる普及拡大を図るために、「さぬきの夢製麺講習会」が開催されました。以下簡単にご紹介します。
今回の講習会では11名の参加者に対し、予め用意した3種類のうどん(さぬきの夢100%、ASW100%、夢40%+ASW60%)を、ゆであげ直後と、ゆで後30分経過の計6種類を試食していただきました。うどん屋さんを前に、うどんをゆでるのはなんとも妙な感じで、すこぶる緊張しました。試食後は7名の方に、簡単なアンケートをお願いしました。説明不足のため集計に若干の不備がありましたが、大まかな傾向はご理解いただけると思います(得点は、Jリーク方式にならい、◯(3pt)、△(1pt)、☓(0pt)として計算)。以下、箇条書きでまとめてみました。
- 茹であげ直後(119pt)、茹で後30分後(81pt)となるのは、当然の結果です。茹であげ30分後のうどんも試食していただいたのは、経時変化をみてもらうためです。
- ブレンドうどん(夢40%)は、茹であげ直後のベスト (46pt)であるのと同時に、30分経過後のワースト(21pt)でもあるのは、興味深い結果です。これは好みのうどんの結果(②)とも一致します。ブレンド比率にもよりますが、ブレンドで使用時は、「釜抜き」や「釜あげ」がベストかもしれません。
- 夢100%うどんは、茹であげ直後(33pt)に対し、茹で後30分後(32pt)と、ほとんど評価が変わりません。これは低アミロース小麦の特徴、つまり「もちもち」とした食感というのは、30分経過後もあまり劣化したと感じないのかも知れません。茹で後の劣化に悩むうどん屋さんにとっては、朗報かも知れません。
二代目「さぬきの夢」は、作業適性が改良されたとはいえ、扱いやすさの点ではASWはまだ一歩及ばないのも事実です。しかしその食味の良さは、それを補って余りあると考えます。要は用途に応じて使い分けることが肝要です。「うどん県。それだけじゃない香川県」という標語にあるように、香川県には素晴らしい特産品が沢山ありますが、まずなんといっても「うどん」であり、そのうどんでもって、周遊人口を惹きつける必要があります。さぬきうどんは、香川県の活性化の切り札であり、「さぬきの夢」は、その原動力です。つまり「さぬきの夢」は香川県活性化の一丁目一番地なのです。できるだけ多くのうどん店で利用されること願ってやみません。