#663 乾麺・・・日本の伝統食品
改めて言うまでもなく乾麺とは、干しうどん、そうめん、ひやむぎ、そばなどの和風麺をいいます。日本人なら誰でも一度は口にしたことがある日本伝統の食品です。歴史は古く、一説によるとそうめんの源流は、索餅(さくへい)にあると言われています。索餅は、奈良時代に遣唐使が中国より持ち帰ったといわれ、小麦粉と米粉を練り、縄のような形にねじった食べ物です。よって乾麺は日本の国麺とよんでも良いのではないかと、個人的には考えます。
さて全国乾麺協同組合連合会(略称:全乾麺)は、都道府県単位で設立している協同組合などを傘下にもつ乾麺メーカーの中央団体です。つまり日本中の乾麺メーカーが(機械乾麺及び手延べメーカー)参加し、組織化した全国団体で、1958年(昭和33年)に創立され、乾麺メーカーの体質改善や業界の経営の安定に取り組んでいます。そして先日その全乾麺の第61回通常総会が開催されました。第61回ということは、全乾麺も満60歳、つまり還暦を迎えたことになります。
そして発足当時と還暦を迎えた現在では、乾麺を取り巻く環境は大きく変化しました。発足直後の1959年(S34)には46万tあった需要は、現在では20万t弱と半分以下の水準になりました。ただこの理由は乾麺に魅力がなくなったのではなく、「食の多様化」にあると考えます。涼感をそそるそうめん、ひやむぎは、夏の定番です。乾麺は毎日食べても飽きることがない、健康的な日本の国民食です。では当時と現在が、具体的にどう違うのかご説明します。
飽食の時代といわれる現在、市場にはおいしい食品(健康的であるかどうかは別です)が溢れかえっています。また利便性・簡便性を訴求した商品も次々に登場しています。うどんを例にとると、以前は乾麺もしくはうどん屋さんの玉うどんしかありませんでした。しかし現在では、解凍すると茹でたての食感が再現できる冷凍うどん、常温で数ヶ月保存できるLL麺、スーパーの冷陳ケースで販売されているチルド麺、乾麺、生うどん、コンビニにある調理麺、即製麺、カップ麺など実に多岐にわたります(#092)。
また「世界初のインスタントラーメン」とされる「チキンラーメン」が発売されたのが、1958年8月。ここから即席麺の歴史が始まり、現在の市場規模は42万tと乾麺の2倍以上に成長しました。そして以前は存在しなかったパスタ市場も、現在は28万トンとなり、その半分は輸入品で、その多くはイタリア・トルコといったEU圏から輸入されています。重要なことは、日EU・EPAの発効に伴い、従来パスタに課税されていた30円/kgの関税は、今後段階的に撤廃されることです。結果、今後パスタの輸入量は更に増え、低価格化が進むと予想されます。よってこれらがカウンターパートである乾麺に影響を及ぼすことは必至であり、乾麺を取り巻く環境は今後一層厳しくなることが予想されます。
ただ一方で明るいニュースもあります。世の中がグローバル化し、ボーダレス化するに伴い、乾麺の海外輸出も始まり、現在その動きは加速されつつあります。パスタがEU圏から輸入されるのと同様に、うどんやそうめんといった乾麺がEUに向かって輸出されています。つまり世界がフラット化するにつれ、世界中のいたるところで何でも手に入るようになりした。
EUやアメリカには、「麺をすする文化」がないので、ラーメンは普及しないだろと一部では思われていましたが、今はブレーク真っ只中です。県内のある問屋さんは、いまや売上の70%が輸出用のラーメンやうどんの関連商品です。今後は商品そのものの魅力が、市場の将来を決定することになります。日本の乾麺から世界の乾麺になるために、一層の品質向上が不可欠となります。