#691 工場見学@株式会社サナス
鹿児島県にある株式会社サナスは、でん粉製品を中心とする食品製造会社です。旧社名の日本澱粉工業㈱から、創業80周年の節目の2017年4月1日に現社名へと変更しました。サナスという社名は、ラテン語のSANUS(健康な)を念頭に、SUN(太陽)とUS(私たち)とが深く結びついているという意味を込めています。つまり太陽と大地の恵みによって育った穀物を素材原料として、そこから得られるでん粉を通して、私たちの食生活に貢献することが大きな目的です。
「なぜ鹿児島ででん粉工業なのか?」と素朴な疑問が湧きますが、沿革をみるとすぐにわかります。サナスは昭和11年(1936)に甘藷でん粉、つまりさつまいもからでん粉製造を始めます。鹿児島といえば、なんと言っても芋に芋焼酎です。そして昭和23年(1948)には甘藷でん粉の特性を生かした「はるさめ」の製造を開始。昭和57年(1982)にはコーンスターチ(とうもろこしでん粉)の製造を開始しコーンインダストリへ進出。平成5年(1993)には「加工でん粉」を製造開始します。
サナスは立地条件にも恵まれています。錦江湾(鹿児島湾)に隣接し、桜島を望む谷山港には、南九州の最重要穀物供給基地として、収容能力23万t超の日本最大級の穀物サイロが立地し、穀物コンビナートを形成しています。見学当日も、はるばるニューオリンズからトウモロコシを積んだ5万tのパナマックス船が陸揚げを完了し、離岸しているところでした。そしてこのサイロからコンビナート内のサナス第2工場まで、コンベアでトウモロコシが運ばれ、コーンスターチが製造されます。更には第2工場から本社工場までは、脱水・乾燥前のスターチミルクが、自動搬送されます。つまりサナスの工場では、原料の搬入がすべて自動化されています。
ところででん粉という言葉はよく耳にしますが、実際どのように利用されているのか、一般消費者にはイマイチよくわかりません。でん粉は、ほとんどの植物に存在する炭水化物で、代表的な種類を挙げると、コーンスターチ(とうもろこし)、ばれいしょでん粉(ジャガイモ)、かんしょでん粉(サツマイモ)、タピオカでん粉(キャッサバ)、サゴでん粉(サゴ椰子)などがあり、植物の種類に応じてそのでん粉の性質も異なります。タピオカでん粉は、小麦粉と相性が良く(?)、うどん(特に冷凍うどん)の原料の一部として利用されることがあります。またサゴでん粉はうどんの「打ち粉」に最適です。
さて、でん粉を酸や酵素によって加水分解することを「糖化」といいます。理由は、加水分解することで「甘み」を生じるようになるからです。そして糖化によって製造された甘味料・ぶどう糖・果糖・水あめなどが「糖化製品」です。サナスでは様々な糖化製品を製造しています。一例を挙げると、でん粉をぶどう糖まで分解して精製した液状品と、これを更に結晶化した粉末品があり、これらは食品の甘味剤として菓子や飲料水に使用されます。また消化吸収性や発酵性に優れているためアルコール等の発酵原料にも使用されます。
水飴はお菓子、キャンデー、アイスクリーム、調味料やドレッシングだけでなく、発泡酒などの種類飲料にも使用されます。コーンスターチは、汎用性が高く糖化用原料だけでなく、ビールの発酵原料や調味料のとろみ付け、そして意外なところではダンボール等の接着剤にも利用されます。更には、加工でん粉は、レトルト食品や冷凍食品などの冷蔵・冷凍耐性や食感などの機能性向上に利用されます。つまり糖化製品や加工でん粉は、私たちの目に直接触れることはありませんが、毎日必ずどこかでお世話になっているはずです。尚、見学当日、桜島では噴火が発生し、噴煙が見事でした。ニュースによると噴煙は山頂火口から上空5500mに達し、1955年から残る記録では、最大ということでした。