#784「7分で伝授、本格さぬきうどんの打ち方!」

遅ればせながら、「うどん打ち動画」をアップしたのでご通知いたします。うどん打ちは、簡単に言えば「小麦粉と塩水を混ぜて生地を作り、熟成後延ばして切る」だけの話ですが、細かくいうとそれなりに、注意すべき点がいくつかあります。既にアップされている他の動画と重複しても、あまり意味がありませんので、今回は特に「水回し」と「熟成」に焦点をあて、説明してみました。以下は、動画の補足説明となります。

「7分で伝授、本格さぬきうどんの打ち方!」

①水回しの重要性
小麦粉と塩水を均一に混ぜ合わせる工程を「水まわし」といいます。水回しの目的は、小麦粉と塩水をできるだけ均一な状態にすることです。完璧な水回しが終了すれば、小麦粉は「そぼろ状」もしくは、加水量が多ければ「パチンコ玉」の状態になります。水回しは、うどん打ちにおいて、きっと最重要工程であるにも拘わらず、軽視されることがあります。その理由は、水回しがうまくいってもいかなくても、団子の状態になってしまえば、区別がつかないからかもしれません。

②そぼろ熟成と1次熟成・・・水和
水回しがうまく終了すると「そぼろ状態」になりますが、この状態で10~15分放置することを「そぼろ熟成」、そしてその後、強い圧力をかけずに生地に丸めて、30~60分放置することを「1次熟成」といいます。どちらも目的は、「小麦粉粒子内への水分の浸透」で、この小麦粉と塩水が馴染むことを「水和」といいます。つまりそぼろ熟成、及び1次熟成の目的は、水和です。動画中では、「強い力をかけずに・・・」と表現していますが、ここが1次熟成時のポイントです。

水和が重要である理由は、いきなり加水して生地を固めてしまうと、生地中の水は動けなくなり、水が届かなかった部分の小麦粉は、いくら捏ねてもグルテンができません。よってうどん特有のコシは生まれません。また加水しても直ちに浸透しない理由は、小麦粉特有の構造にもあります。小麦粉は一見、細かい均一な粉状に見えますが実はそうではありません。画像にあるように、小麦粉は様々な粒子で構成されています。

具体的に言えば、17μ以下の区分には、バラバラになったクサビ型タンパク質が多く集まるので、タンパク質が多い区分となります。一方、35μ以上の粗い区分では、デンプンがタンパク質に包まれた細胞片が集まるので、タンパク質量は、やや高くなります。そしてそのあいだの17~35μの区分では、デンプン粒の中粒が多くなるため、タンパク質量は少なくなります。いずれにしても、加水後一気に固めてしまうと、大きな粒子には水が浸透しなくなり、均一な水和ができなくなるので、このそぼろ熟成と1次熟成は、重要な工程となります。

③2次熟成・・・緩和
1次熟成が終了すると、足踏み工程(捏練工程)に移ります。最初の足踏みでは、生地は直ぐに平らになります。次にそれを折りたたんで踏む作業を何度か繰り返すうちに、足の裏に生地の硬さを感じるようになります。この現象を専門用語で「加工硬化」といいます。そして足踏みが終了した生地を、暫く寝かす(放置)工程が2次熟成です。2次熟成前の生地は、粗くてゴツゴツしていますが、熟成が終わるとてかてかと艶がでて滑らかになり、延ばしやすくなりますが、このことを「構造緩和」といいます。つまり2次熟成は、緩和工程のことで、そぼろ熟成や1次熟成(水和)とは目的が異なります。

構造緩和の仕組みとは、混捏直後のグルテンは、SH基を中心とした縦方向の網目が主体であるのに対し、熟成を行うことでS-S結合という横の繋がりも増えるので、結果としてより稠密な網目構造ができるからです。この現象を専門用語でSH-SS交換反応といいます(#142)。いずれにしてもこの水和と緩和がキチンとできると、コシのある美味しい手打ちうどんができるようになります。