#798 祖父との年賀状作り
年末年始は、第5波も収まり穏やかに過ごしましたが、その反動か想定以上の第6波がやってきました。今や、感染者数は累計400万人を超え、これはなんと国民30人に1人が感染したことになります。つまり今やこれだけ身近な存在になっている状況に不思議な気さえします。さてイラスト担当者による新着情報をお届けします。
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先月は年始ということもあり、新着情報をスキップしてしまいました。遅ればせなから新年あけましておめでとうございます。約2年ぶりの帰省は、どうしようかと悩みましたが、第5波以降感染状況が落ち着いていたので、この機会を逃すまいと、帰省を決行しました。東京を出る直前にはPCR検査もしっかり受け、意気揚々と帰りましたが、帰っても特に何をするでもなく、ただ実家でゴロゴロするだけ、またたまに友人と食事するなど、なんとも優雅な(?) 寝正月三昧でした。
そんな自堕落な休暇を過ごした私ですが、一つだけ有意義なことがありました。それはしっかりと祖父孝行できたことです。東京にいる間も時々電話はしていたものの、高齢であるためにこの2年間は体調に波があり心配でした。ただ嬉しいことにここ最近は体調も良好で、毎日やりたいことが盛り沢山で忙しいらしく、互いの近況報告をしても孫より祖父の生活の方が遥かに充実しているように思えます。
そんな祖父は「ワード」ソフトを操り、10年ほど前から思想や歴史、教育、社会情勢などあらゆるテーマについてまとめています。元気な頃は図書館にも足を運んでいましたが、今は専ら新聞記事を中心に興味をもった内容をまとめることで、ボケ防止や脳トレになっているようです。そして年末になると、そこに「年賀状作成」という年次行事が追加されます。PCには誰もが使っているような年賀状作成ソフトが入っているのですが、今年はソフトが変更になったようで、その対応にてこずっているようでした。
帰省して祖父宅に行くや否や、再会の感動もそこそこに、「このソフトどうなっとんか見てくれんかな?」といきなりPCを起動させました。メカに弱い私ですが、マニュアルを頼りにかろうじて起動に成功。挿入するイラストは、祖父に選んでもらい、なんとか印刷までこぎ着けました。印刷枚数は50枚ほどで、内訳は親戚はじめ昔の職場の仲間など、私が知らない人がほとんどでした。祖父は恒例行事としてしか考えてないようですが、私からみるとこの時代に、まだ年賀状を送り続ける人がいることにびっくりでした(そう思う私は今年は遂に年賀状が来なくなりました)。
ところで印刷した年賀状には、明らかな余白があるので、てっきり祖父が一言添えるものだと思っていました。祖父に「あとは一言メッセージ書くだけやな」と言うと「いや、書かんでええ」とひと蹴りされました。それにしても余白が気になります。ここまできたら最後まで完璧な年賀状に仕上げたいではありませんか。私は無心で筆を取り、まだ見ぬ相手へ「本年もどうぞ宜しくお願い致します」の文字を綴りました。計50枚しっかりと書き切り、祖父以上に謎の達成感を得た私でした。それから2週間後、東京に戻り、久しぶりにポストを開けると祖父からの年賀状が届いていました。そこには2週間前の自筆のメッセージがあり、なんとも言えず不思議な感覚に陥りました。
SNSの普及が加速され、最近は特に年賀状の減少が顕著だと聞きます。確かに両面印刷の賀状を見てもあまり感激はしません。また一度しか会っていないのに、一度出したばっかりに。賀状を交換し続けている人もいるという話を聞き、複雑な思いもします。「持続可能な社会実現のために年賀状は、今年でやめにします」というケースも聞きました。年賀状は今後、どんな運命をたどるのでしょうか。