#851 県産小麦100%で作る手打ちうどん試作会
これまで香川県産小麦は「さぬきの夢」1択でしたが、令和5(R5)年産より硬質小麦「はるみずき」の生産も開始しました。今後は需要に応じて、増産を予定しています。はるみずきは、大分県の推奨品種に指定され、現在は大分県と奈良県で生産されています。農研機構の資料によると次のような特徴を有しています(#844)。
「はるみずき」は西日本の主要なパン用小麦品種「せときらら」より子実のタンパク質含有率が高く、小麦粉の生地物性が強く、製パン性に優れる品種です。「せときらら」より早生で、稈長が短いため倒伏に強く、西日本向けのパン用小麦として普及が期待されています。また「はるみずき」は、「せときらら」より成熟期が2日早い早生品種で、稈長は短く倒伏に強い品種です(農研機構資料)。
香川県産はるみずきの生産を始めた理由は、2つあります。ひとつは香川県産小麦100%でパンを焼くこと、そして2番目は香川県産小麦100%で作る手打ちうどんのバリエーションを広げることです。特に後者においては、「さぬきの夢」に強力小麦粉はるみずきを一定割合でブレンドすることにより、作業適性を大きく向上させることができます。そこで今回は、うどん県主催による試作会にて、ブレンド比率3種類を試してみました(①「さぬきの夢」100%、②「さぬきの夢」70%+はるみずき30%、③「さぬきの夢」60%+はるみずき40%)。
打ち手は皆さん年季の入ったうどん専門店の「すかし打ち」の名人ばかりです。名人が打つと、巻き取った生地を引き寄せるときに麺棒が一瞬、打ち台から浮き、それが落ちるときに「トン」と音がします。これを連続的におこなうと、「トントントン」とリズミカルな音がしますが、これが「すかし打ち」です。さて名人が打ったうどんなので3種類とも素晴らしいできばえですが、それでも原料小麦の差異による違いはあります。
結論から言うと、②「さぬきの夢」70%+はるみずき30%の組合せは、ほどよいコシ、風味、そして作業適性の良さが高評価されました。③は強力粉割合が多いために食感が硬くなりすぎ、また①はグルテンが少し低いために作業適性にやや難ありでした。このはるみずき30%の配合比率は、あくまでも今回の一例であり、今後各社がそれぞれ詳細なテストを繰り返し、最適なブレンド比率を決定することになります。
実は弊社でも既にはるみずきのブレンド比率を15%、25%で試したところ結果は良好でした。両者を比較すると25%ブレンドは多少食感が硬く感じられ、15%程度が良好であるという結論になりました。要するにはるみずきを適度にブレンドすることで作業適性と食感の両方を向上させることができます。作業適性が向上すると、熟成工程における緩衝力が大きくなります。つまり熟成時間に幅を持たせることができ、結果宵練りも可能となります。
さらに特筆すべき点は、ゆで後の短麺、つまりうどんの切れ端がなくなったことです。「さぬきの夢」はタンパク含有量が少なめなので、うどんの「つなぎ力」が低く、ゆでるとどうしても短麺が目立っていました。しかし強力粉をブレンドすることで「つなぎ力」がアップし、結果、短麺は見られなくなりました。これは非常に評価すべきポイントだと考えます。「さぬきの夢」に「はるみずき」が加わることで、うどん県産100%の小麦粉バリエーションが広がり、今後はうどん専門店に様々なご提案ができることになります。今後香川県産はるみずきに大きな期待を寄せています。
試作3種