#864 小麦粉消費量の推移と食生活の変化
#860同様、e-Stat(政府統計ポータルサイト)からダウンロードしてグラフにしてみました。まず私たち1人当たりの主要穀物摂取量(米、小麦、大麦)をグラフにしてみました。ここでの摂取量は可食部換算なので、加工前の重量とは異なります。例えば玄米は精米することによって、9%が米ぬかになります。つまり直近では米は51.54kg摂取していますが、これは玄米に換算すると51.5÷0.91=56.6kgとなります。同様に小麦は78%が小麦粉で、残りは「小麦ふすま」となるので、31.6kgの小麦粉摂取量は、小麦換算すると31.6÷0.78=40.5kgとなります。同様に大麦の歩留りは48%なので0.3÷0.48=0.63kgとなります。
さてグラフをみて象徴的なことは、お米の摂取量が114.9kg↓51.5kgと以前の半分以下になっています。これはお米の魅力が薄れたということではありません。以前にも増して美味しくなったけれども、それ以上の食生活が多様化したと考えるべきでしょう。余談ですが、昔は選別技術が完全ではなかったために、石ころが米に混じることがありました。年配方の中には、ご飯の中の石ころを噛んで、不快な経験をされた方もいると思います。
一世帯当りの米とパンに対する支出金額は、2000年にはそれぞれ40,256円と27,512円だったものが、2011年には27,428円と28,316円と逆転しました。勿論、お米は炊飯器で調理する必要があるのに対し、パンはそのまま食べることができるので、単純な比較はできませんが、これは実に象徴的な出来事です。蛇足ですが、米の消費は1960年から一時的に伸びていますが、これはまだ大麦が増量剤として使用されていたからだと思います。
一方小麦は、25.8kgから31.6kgと増加していますが、ここ最近はほとんど横ばいです。ただお米と小麦粉、どちらも主要穀物ですが、お米は減少し、小麦粉は増えた理由は、その多機能性にあると思います。つまり小麦粉と一口に言っても、その用途はうどん、そうめん、ラーメンなどの麺類、ケーキやクッキーなどのお菓子、そしてピザやパンなど幅広く、その多用途性が小麦粉の消費が伸びた一番の理由です。また小麦粉生産量の種類別の推移をみると、強力粉の伸びが167%と一番大きく、これからパンやピザなどの消費が特に大きく伸びたことがわかります。
大麦は8.3kg↓0.3kgと大きく落ち込みました。1年で300gというのは、1日僅か1g、これはほとんど舐めているようなものです。昔はお米が高価だったので、麦ごはんといって、その中にいくらかの大麦をいれて調理していましたが、現在は健康食品としてごく一部の需要があるようです。焼酎には70万t余りの大麦が使用されていますが(#860)、これは加工用に分類されるため、食品としての大麦には換算されません。
主要穀物の合計(米+小麦+大麦)、摂取量は148.8kg↓83.3kgと56%程に減っていますが、だからといって私たちの摂取カロリーが減っているわけではありません。生活が豊かになるにつれ、主食よりも副食(おかず)の割合が多くなっただけの話です。よって現在の食生活は、摂取カロリーは多く、またその栄養バランスは余り好ましいものではありません。これは次の供給熱量の推移をみると明らかです。
昭和35年から令和3年の間に、1人当たりの供給熱量は2,291kcal↑2,265kcalとほぼ同じですが、その内訳は大きく異なります。お米は1,106kcal↓482kcalと43.5%になりましたが、その代わりに畜産物と油脂類が増えています。つまり(米+畜産物+油脂類)の合計熱量はほとんど変わっていません。運動不足に加え、こういった動物性たんぱく質や脂質の取り過ぎが、糖尿病などの成人病を引き起こすわけで、決してうどんの食べ過ぎが成人病の原因になっているわけではありません。現在、医療費は増加の一途を辿っています。しかも加速する高齢化はそれに拍車をかけています。なんとか食生活を改善し、適度な運動を生活に取り入れ、QOL(Quality of life、生活の質)をアップさせ、医療費も削減したいところです。