#865 各種麺類生産量の推移@2023
各種麺類生産量の推移をe-Stat(政府統計ポータルサイト)からダウンロードしてグラフにしてみました。一口にめん類といっても多種多様ですが、政府統計ではめん類を生めん、即席めん、乾めん、マカロニ類の4種に分類しています。最近、存在感がぐっと増してきた冷凍麺は、生めんに含まれます(全麺連による「生めん」の定義はこちら)。こうやって50年の推移をグラフにしてみると、めん類の栄枯盛衰がよくわかります。
まず指摘しておきたい点は、いくら政府統計といえども、生めんの(2001~2015)期間における凹みは余りに異常で、この期間の数値は不正確と思わざるを得ません。いずれにせよこの50年余りの期間で4種のめん類は次のように変化しました:
①生めん: 47.1万㌧⇒75.9万㌧(161%)
②即席めん:22.9万㌧⇒39.7万㌧(173%)
③乾めん :36.4万㌧⇒19.0万㌧(52%)
④マカロニ類:7.5万㌧⇒15.9万㌧(212%)
つまり4種のめん類のうち乾めんのみが大幅減となり、他の3種は大幅増となりました。この理由としては、製造、包装、保存、流通のそれぞれの段階において大きな技術革新があったことに加え、人々の嗜好の変化もあります。たとえばゆでたうどんを加熱殺菌し、完全密閉することで、数ヶ月の常温保存できるLL(Long Life)麺や打ち立て食感をそのまま再現できる冷凍うどん、そして即席めん・カップ麺などは、そのような技術革新のおかげです。
冷凍うどんは、タピオカでんぷんを配合することで、ゆで時間の短縮、食感の改善(好みにもよりますが・・・)、そして冷凍保存性を向上させました。尚、冷凍めんはこの4種の分類中、①生めん類に含まれます。2022年の冷凍めんは20.5億食(業務用8億食、家庭用12億食)が生産され、1食当たり小麦粉100gで換算すると20.5万㌧となり、大いに存在感を示しています。
日本伝統のめん類である乾麺は、確かに美味しいが、利便性、簡便性において他のめん類に一歩譲るため、苦戦を強いられている状況です。
マカロニ類は、212%と大きく伸びましたが、この表は国内製造分しか含んでいません。実はマカロニ類は、国内製造(15.9万㌧)よりも輸入量(16.9万㌧)の方が大きく両者を合計すると32.8万㌧にも達し、輸入量を考慮すると実質的には437%となり、ダントツの伸びを示しています。パスタも乾麺もゆでる手間は同じですが、パスタはゆで上げ後そのまま盛り付け可能である点や、食生活の欧米化が影響しているようです。
さて美味しいにもかかわらず凋落ぶりが顕著な乾麺ですが、更に細かくみると乾麺の中でもかなりの格差があります。次のグラフは、乾麺の種類毎の推移です(出典:乾麺生産量の推移、2023乾麺・めんつゆ、食品新聞刊)。30年間に乾麺全体では、30%程度落ちていますが、特に落ち込みが大きいのがうどん(38.8%)です。うどんは乾麺の中でも特にゆで時間が長いので、一部が冷凍うどんやLLめんに代替されたのは、明らかです。そばは93.8%とかなり健闘しているといえます。ひやむぎは個人的には、大好きなので、41.4%と激減しているのは理解に苦しみます。一方、干中華のように大きく伸長している(280.4%)乾麺もありますが、これは乾麺というよりも、ラーメンのひとつのアイテムと考えるべきかもしれません。
全体としては、需要の落ちた乾麺ですが、これは乾麺に魅力がなくなったということではありません。つまり社会が豊かになり、食品の多様化が進み、美味しい食品がたくさん流通するようになった結果です。また同じ乾麺でもメーカーによってそれぞれ個性があります。一度、色々な乾麺を試してみて、乾麺の美味しさを再認識されてみてはいかがでしょう。