#867 さぬきうどんツーリズム
先日(2023.7.1)、「さぬきうどん研究会」例会の中で、原直行先生(香川大学経済学部)による講演「香川県におけるフードツーリズムの可能性」がありました。内容は多岐にわたりましたが、ここでは「うどん関連」部分だけを独断でまとめてみました。フードツーリズムとは、「地域ならではの食・食文化をその地域(土地)で楽しむことを目的とした旅」(日本フードツーリズム協会)、もしくは「旅行者が訪問地での飲み物を含めた土地に根ざす味覚を体験する観光の形態」(日本フードツーリズム学会)のことです。
一口にフードツーリズムと言っても、大きく①高級グルメツーリズム、②庶民グルメツーリズム、③マルチグルメツーリズム(庶民グルメから高級グルメまで)の3つに分類されるそうで、この分類でいうと讃岐うどんは②となります。香川県は近年、「うどん県」というニックネームも浸透しつつありますが、骨付鳥やオリーブも台頭してきているので、うかうかはしていられません。特に骨付鳥発祥の地を自認する丸亀市は、「うどん県」に触発されて「骨付鳥市」に改名しようという動きもあるようです(余談ですが、「うどん県骨付鳥市」と言われても、なかなかピントはきません)。
少し遡りますが、原先生は「讃岐うどんとフードツーリズム(香川大学経済学部論叢2007年9月)」の中で、次の2点を研究課題として挙げ、様々な調査・考察を基に、下記のように結論しています:
【研究課題】
・香川におけるどん屋巡りはフードツーリズムとして成り立っているのではないだろうか。
・フードツーリズムを実践しているうどん屋巡りの客層は、どのような特徴をもっているのであろうか。
【結論】
讃岐うどんは、フードツーリズムとして成り立っていて、次のような特徴がある。
①客層の大部分は20・30代層であること
②香川県より県外(とくに大阪、兵庫などの近畿地方)からの来客が極めて多いこと
③2回目以上(とくに5回目以上)のリピーター客が多いこと
④うどん屋によっては客層が異なること
⑤日帰り客が多いこと
⑥うどん屋巡りだけが目的の客が多いこと
⑦讃岐うどんの魅力として、価格・味などの基本的要件、うどん屋の数・種類などのバリエーション、うどん屋の雰囲気などのレクリエーションの3つがあること
さて以上が、主として2007年時点での分析ですが、その後うどんツーリズムがどうなったかというと、お陰様で、順調に推移しています。また当時のツアー客の多くは、そのまま永続的な固定客となった結果、現在では50・60代の客層も充実し、うどんツーリズムは、中年層から高年層まで取り込んだ幅広い客層により支えられています。また2010年に始まった瀬戸内国際芸術祭(以下瀬戸芸)もうどんツーリズムを大きく後押ししてくれています。瀬戸芸のテーマは、テーマに「海の復権」、かつては瀬戸内海で光り輝いていた島々がもう一度活力を取り戻すためのきっかけ作りです。また「島々」は、首都圏に対する香川県でもあります。つまり「海の復権」だけでなく「地方の復権」でもあるのです。
原先生に頂いた資料によると、2012-2019年における都道府県別外国人延べ宿泊者数の伸びは、香川県が突出し、四国各県の外国人訪問者及び旅行消費額においても同様です。これもひとえに瀬戸芸様々です。コロナ禍で一休みしましたが、今後はうどん県とアート県との相乗効果によりうどんツーリズムがより盤石なものになるものと期待します。ただそのためにはコンテンツ、つまりうどん店そのものが更に魅力的になる必要がありますが、懸念材料がないわけではありません。またうどん店舗数が減少しているのも気になるところです。