#890 「『食』が動かした人類250万年史(新谷隆史一著)」・・・③
#887に引き続き、本書の内容をまとめて、後に簡単な感想をまとめました。
【⑨トマト】
トマトの原産地はアンデス山脈の高地で、700年頃から栽培が始まったようです。1521年にアステカ帝国を制服したスペイン人エルナン・コルテスが1527年にヨーロッパに持ち帰ったという説が有力。現在のイタリア料理の定番となっているトマト料理の多くは、19世紀になって考案されたそうです。ピザ・マルゲリータでは国旗の緑・白・赤を表すようにバジル、モッツァレラチーズ、トマトからできています。
【⑩ファーストフードが流行る理由】
多くのファーストフードに共通する特徴として脂肪分が多く含まれています。ハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン、ピザ、牛丼、ラーメンには脂肪分が多く含まれ、この脂肪分は脳の報酬系とよばれる部分に作用し快感を生みだします。脂肪分は動物にとって格好のエネルギー源であるために、報酬系が快感を生みだします。つまり報酬系をうまく活発化できる商品は「売れる」のです。一般に商品に含まれる脂肪分を減らすと売上が落ちることが統計的にわかっています。そのためファーストフードなどの外食産業では脂肪分が高めに設定されていることが多いと言われ、これが現代人の脂肪摂取過多の一因にもなっています。
【⑪異性化糖】
異性果糖は清涼飲料水などによく使用され、原材料欄には「果糖ブドウ糖液糖」とか「ブドウ糖果糖液糖」と表示されています。デンプンを分解してブドウ糖を作り、さらにブドウ糖の半分程度を果糖に変化させる製造方法は、1965年に日本で開発されました。異性化糖は工業的に安価に製造できるため、食品業界で広く使用されています。一方、果糖は血管などを傷つけやすく、多量に摂取すると血中のトリグリセリドが高い脂質異常症になりやすいことも報告されています。
【⑫人工甘味料】
人工甘味料といえば昔はサッカリンが有名でしたが、現在は後味の良さや使い勝手の良さでスクラソース(甘さは砂糖の600倍)というノンカロリー人工甘味料の使用が増加しています。しかし最近になって世界保健機構は、肥満や病気予防のための人工甘味料使用を控えるよう勧告。理由は、人工甘味料は3ヶ月以内の短期間では減量効果が認められるものの、長期間ではその効果が見られないこと。また長年にわたる摂取は、2型糖尿病や脳卒中、心血管疾患の発症リスクが20~30%増加するからです。
【⑬ハイブリッド品種】
現在、店頭に並んでいる野菜の多くは、ハイブリッド品種、別名F1(1代雑種)とよばれるものです。これは2つの異なる品種の植物を交配させ、その食物が実らせた種子を採取して育てたものです。つまり2つの品種から生まれた雑種で、一般にはそれぞれの品種の性質を併せ持つことが多く、野菜でいえば病気に強い、気候変動に強い、生育が旺盛、サイズが大きい、美味しいといった利点があります。但しその優れた性質はその世代限りという欠点があるため、ハイブリッド品種を育てるためには、毎年種苗メーカーから新しい種や苗を購入する必要があります。
【感想】
【⑨】イタリア国旗の3色は、緑は「国土」、白は「雪」、赤は「愛国の熱血」を表すと言われてもなかなか覚えませんが、ピザにたとえて緑はバジル、白はモッツァレラチーズ、赤はトマトなら胸にストンと落ちます。「食」はそれほど密接に生活に結びついているからでしょうか。
【⑩】味には甘味、塩味、酸味、苦味、そして旨味という5つの基本味があります。また「脂肪」には甘味や旨味の強度を高め、苦みを抑制する効果があるため、現在では第6の味覚といわれています。確かに料理に油をいれると食味が向上したように感じますが、これは「脂肪」の効果のようです。そういえば最近うどん店でも、「肉うどん」の注文が多くなってきたような気がします。ただ小麦粉本来の風味を味わうには、「かけうどん」、「釜揚げうどん」などがお勧めです。