#899 日本におけるシリアル食品市場

シリアルついでに「日本におけるシリアル食品の位置付けは?」と思い、少し調査してみると「日本におけるシリアル食品市場の生成・発展に関する史的分析(竹内竜介・陰山孔貴著)」という興味深い記事が目に止まりました。この記事を簡単にまとめ、後に感想を付け加えます。

私たちが普段口にする食品の中には、外国企業が開発し、日本に導入した食品が多数あり、ここではそれを「外来製品」と呼ぶことにします。代表的な外来製品としては、「コーラ飲料」、「ハンバーガー」、「ピザ」、そして「シリアル食品」などがあります。コーラやハンバーガーはご承知のように日本市場への浸透はスムーズに進み、今や日本人の食生活の必須アイテムとなっています。

一方、穀物をすぐに食べられるように加工されたコーンフレークやグラノーラといったシリアル食品は、1960年代に、「日本の従来の朝食とは異なる新しい朝食」という製品カテゴリーとして登場しました。ただコーラやハンバーガーは日本市場への浸透がスムーズに進んだのとは対称的に、シリアル食品市場の開拓・発展には時間がかかりました。グラフからわかるように永い間シリアル食品市場は伸び悩んでいましたが、ここ最近10年位で急伸しました。その経緯は以下のようになります。

【①市場生成期(1960年代~80年代前半)】
当時欧米では既に朝食として認知されていたコーンフレークが、日本市場に登場したのは1963年3月。欧米にならい、当初は栄養価の高い美味しい朝食として営業展開されましたが、なぜか日本では朝食としては根付かず、代わりに「おやつ」として消費者には認知されていきます。生産額は28億円(1972年)から47億円(1977年)と増加はしたものの、他のスナック菓子と比較すると市場は小さく、「おやつ」としてのシリアル食品市場は大きく育ちませんでした。

【②市場の第一次発展期から安定期(1980年代後半~2000年代)】
1970年代頃からは「朝食シリアル」という用語を採用し、シリアル食品は健康に良い朝食向けであることを理由に、大人向け製品であることをアピールします。そして①「玄米フレーク」、「オールブラン」、「ブランフレーク」といった製品ラインアップの増加、②菓子売場から米やパンと同じ食品売場への配置転換(1985頃)、③テレビCM などの広告宣伝活動の強化、といった販促強化を行った結果、シリアル食品の生産高は1990年に初めて200億円を突破します。その後、市場はそのまま発展するかに思われましたが、またもや売上は伸び悩みます。

【③市場の第二次発展期(2010年代以降)】
食品には「第1次機能:生命活動を維持するための栄養補給機能」、「第2次機能:色、味、香り、歯ごたえ、舌触りなど食べたときに美味しさを感じさせる嗜好・食感機能」、「第3次機能:疾病の予防や健康に維持・増進など整体の調整機能」という3つの機能があります。そこで美味しさである第2機能に重点をおき、美味しく健康的なグラノーラの種類を増やします。またシリアル食品を「朝食の主食」から「朝食の食材」、つまりヨーグルトと一緒に食べるといった補助的な「製品カテゴリー」に位置づけることで発展し、市場価値は600億円を達成し現在に至ります。

【個人的感想】
シリアル食品は、「朝食」⇒「おやつ」⇒「美味しさ重視の朝食」⇒「美味しい朝食の食材」といった製品カテゴリーの変遷を経て伸長してきました。しかし同じ「外来製品」であるハンバーガー系ファーストフード市場(7,000億円)やピザ市場(業務用市販用+外食=3,000億円)と比較すると内食・外食の違いはあるにせよ、シリアル食品は地味な感じがします。ましてやヨーグルト市場(4,500億円)と比較すれば余りに存在感が薄いと感じます。とは言うものの、個人的には、朝食はシリアルではなくトースト派であるのに加え、ヨーグルトは毎朝頂いているので、この結果は致し方ないかとも思います。それにしてもシリアル食品、もう少し頑張ってもよさそうですが・・・。