#900 令和5年度県産小麦100%でつくるさぬきうどん研修会

弊社にて上記研修会(2024年3月21日15:00~17:00)を開催したところ、9名のうどん屋さんにご参加いただきました。スタッフ一同イベントには不慣れですので準備に手間取りましたが、普段不義理をいたしておりますユーザ様との研修会は新鮮かつ有意義でした。この貴重な機会を設けていただきました香川県農業生産流通課ご一同様にはこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。なお、研修会は①弊社工場見学 ⇒ ②製粉工程の説明 ⇒ ③「さぬきの夢」と「夢みずき(さぬきの夢とはるみずきの配合粉)」の試食会の順で進行しました(進行させるのが精一杯で、画像はありません)。

【小麦の製粉工程】
「玄米の精米」と「小麦の製粉」は、どちらもすることは同じで、中心の胚乳部分を取り出すことです。ところが前者は簡単であるのに対し、後者は複雑かつ精緻です。全国各地にコイン精米機が点在している理由は、コメは搗きたてが美味しいのと同時に、精米工程の自動化が簡単であるからです。岡田哲氏の言葉を借りると「玄米はサトイモ、小麦はカニのような構造」であるため、精米のように小麦の表面を研磨するだけでは、表皮(強靭な食物繊維)がもろい胚乳と混ざりあいきれいな小麦粉にはなりません。それゆえ小麦製粉は、面倒な「段階式製粉方法」を実践しています。

【「さぬきの夢」と「夢みずき」の試食会】
従来の香川県産小麦は、「さぬきの夢」一択でしたが、R4よりパン用硬質小麦「はるみずき」の生産も始まりました。これにより香川県産小麦100%の小麦粉のバリーションが広がり、今後が楽しみになりました。うどん屋の大将たちを相手に製麺研修会とは釈迦に説法、河童に泳ぎ方を教えるようなもので常軌を逸した行動ではありますが、研修会の目的はあくまでもパン用硬質小麦「はるみずき」を「さぬきの夢」に添加した場合の作業適性を比較するのが目的ということでご容赦いただきました。

食味は秀逸であるもののグルテン含有量とその粘弾性にやや難ありと言われる「さぬきの夢」。乾麺であれば、ある程度ロール機で締めつけるため、ASWと比較して、やや平麺になる傾向はあるものの、作業適性そのものは問題ありません。しかしゆでうどんとなると熟成時間、加水量などの問題が絡み、軽微な問題がいくつか発生します。特に麺線状態で長時間保存した後にゆでると短麺が少なからず発生するようです。そこではるみずきを適量添加することで製麺適性の向上が可能です。

試食会では、①「さぬきの夢」ゆで直後、②「夢みずき」ゆで直後、③「さぬきの夢」ゆで後30分、④「夢みずき」ゆで後30分の4種を試食していただきました。③と④は、両者のゆで伸びを比較するためです。夢みずきは、グルテン強化されているため、多少ゆで時間がかかるものの、ゆで後30分経過しても「しっかり感」は十分に確認できました。以下は、弊社営業による総括です。

さぬきの夢・・・色艶良く、モッチリ感や風味もある。ざるのコシも悪くはない。湯煎での試食では、食感(コシ)はやや劣る感あり(個人的な違和感はない)。一般の評価では、コシが弱いと感じるかも。

夢みずき®・・・「さぬきの夢」よりやや白く見えるが、比較しなければわからない程度。グミ的な 「コシ」の食感を評価したい。噛んだときの跳ね返り感や、ソシャク時の食感が分かりやすく、好印象を感じる。湯煎でもコシが感じられ、風味も及第点。

総合評価・・・ 色調は、さぬきの夢が好印象だが、差は僅か。 コシ感及びモッチリ感については、夢みずきの方が一般向けにはわかり易いと判断。 理由は、ストレートではっきりわかる食感であることに加え、茹で後20分後の比較においても、夢みずきの方にコシが感じられるため。 風味に関しては「さぬきの夢」が好みではあるが、「夢みずき」も悪くない。結局は、評価は各個人の好みにより分かれる。

最後に香川県産麦(JA香川県)生産量の推移をアップしておきます。R5産「さぬきの夢」と「はるみずき」の単収は355kg/10a、411kg/10a。またR6産の作付面積は、2,380ha(-78ha)、117ha(+44ha)。はるみずきは200ha播種の予定でしたが、実際は諸事情により117haに留まったのは残念でした。