#925 R6産「さぬきの夢2023」の製粉・評価会

今年は、次期「さぬきの夢」に決定している「さぬきの夢2023」が21㌧ほど収穫されました。そこでこれを工場製粉した小麦粉による評価会が令和6年9月27日に香川県農業試験場にて開催されました。以下、簡単に評価会の内容に沿って説明します。

【①R6年産「さぬきの夢2023」100%で作ったうどんの官能評価】
「さぬきの夢2009」100%うどんをベンチマークとして、「さぬきの夢2023」100%うどんを「さぬきの夢」推進協議会関係者27名により評価されました。詳細な評価結果は後日となりますが、概ねの評価は以下となりました。

色調については、「さぬきの夢2009」がきれいな淡黄色を呈するのに対し、「さぬきの夢2023」はややくすんでいるが、これが国産小麦らしい色調であるといった意見もありました。両者を並べるとまるで「さぬきの夢2009」がASWのように見えました(画像参照)。一方、食感については「さぬきの夢2009」は程よいコシがあるのに対し「さぬきの夢2023」は一段と強いコシに仕上がり、この辺りについては評価が分かれるところです。

【②R6年産「さぬきの夢2023」製粉の結果報告】
細かい分析結果は省略しますが、「さぬきの夢2023」の一番のウリは、そのグルテンつまりうどん生地の「つなぎ力」の強さです。グルテンは弾性をもつグルテニンと粘性をもつグリアジンから作られる粘弾性をもったタンパク質です。よってこのグルテンが強いと、うどんは切れにくく作業適性が良好となります。

分析の結果、R6産「さぬきの夢2023」の総グルテンは20.7%、グルテンインデックスは92.0%であるのに対し、R6産「さぬきの夢2009」の総グルテンは21.1%、グルテンインデックスは82.1%となりました。ここでグルテンインデックスというのは、「総グルテン」に占める「強いグルテン」の割合です。つまり一口にグルテンといっても様々な性質のグルテンがあり、グルテンインデックスがうどんの「つなぎ力」の源となります。

よって総グルテン量は、「さぬきの夢2023」の方が少ないにもかかわらず、グルテンインデクスの割合が大きいので、うどん生地は繋がりやすくなります。簡単にいうと「総グルテン」✕「グルテンインデックス」の量が、「つなぎ力」を表すイメージになります。

グルテンが強くなり作業適性が向上するとどんなメリットがあるかといえば、うどんが切れにくくなるのに加え、「宵練り」つまり前日の仕込みが可能となり、作業効率がアップします。実際は当日の朝に生地を仕込むのが理想ですが、うどん店の朝はやることが沢山あるので、できれば前日に生地の仕込みができれば都合がいいのです。ASWは宵練りが可能ですが、「さぬきの夢2009」は宵練りだと翌日には生地がだれてしまいうどんが切れやすいという欠点がありました。つまり「さぬきの夢2023」はこの欠点を解消したわけです。

【③「さぬきの夢2023」の導入スケジュール】
昨年(R5)は、高松地域で5.4ha(25tが収穫)、今年(R6)は5h(同20t)が耕作され、 工場製粉が実施。今後はR7:100ha、R8:900ha、そしてR9は県内全域(2,500ha)において「さぬきの夢2023」が収穫され、導入が完了する予定です。

【④意見交換】
大方の意見を集約すると、「さぬきの夢2009」をベンチマークにしたとき、「さぬきの夢2023」の特徴としては次のようなものでした。
①少し「くすみ」が気になる。
②同じ低アミロース系小麦であるが「もちもち食感」ではなくしっかりとした噛み応えが特徴であり、これはモチモチブームの現在では却って良いかもしれない。ただ何れにしても最終的にはユーザが判断するのでうどん店の評価を待ちたい。
最大の特徴は、作業適性の向上により「宵練り」が可能になったこと。いずれにしても「さぬきの夢2023」はかなり性質の異なる小麦となりました。