#935 外食・中食産業の現状—コロナ禍後の外食・中食—
2020年にコロナ禍に入るやいなや、巣ごもり生活が始まりました。そして2023年5月にやっと感染症法上の5類に移行し、今ではすっかり元の日常生活に戻った感がありますが、すべてが元に戻ったわけではありません。讃岐の冠婚葬祭に関していえば、華美で大人数の披露宴は影を潜め、また葬式は家族葬が多くなりました。また自治会行事も簡素化されたままのところが多いようです。一方、お祭りはほぼ元通りに戻ったので、こちらは皆さんに望まれていることの証でしょうか。つまりコロナ禍によって実質重視の傾向が強まり、従来の慣習が取捨選択されたように感じます。
さて前置きが長くなりましたが、業界紙(製粉振興2024.11月号)に「外食・中食産業の現状-コロナ禍後の外食・中食-(堀田宗徳著)」という記事が掲載されていたので、こちらはどうなったのか簡単にご紹介します。外食・中食は一見、元に戻ったように見えますが、金融緩和による円安、ウクライナ・イスラエルなどの地政学的問題、世界的なインフレによる食材価格の高騰、ガス・電気等エネルギー価格の値上げ、物流費上昇、人手不足による人件費上昇などの値上げ要因が目白押しで、業界は不安定要素満載です。
さて一口に外食産業といっても、様々な形態がありますが、私たちが「外食」と聞いて連想する食堂・レストラン、そば・うどん店などは、給食主体>営業飲食>飲食店部門となり、直近(令和5年)では、14兆1,313億円と、全体24兆1,512億円の58.5%になります(画像参照)。
外食産業全体の市場規模の推移をみると、令和2年はコロナ禍により大きく落ち込み、直近の令和5年は24.2兆円と回復したものの、コロナ禍直前の26.3兆円(令和1年)の92%程度にとどまっています(画像参照)。飲食店部門14.1313兆円を単純に人口1.25億人で割ると11.305万円となり更に365日でわると310円となり、ざっくりいうと毎日さぬきうどん1️杯分となります。
一方、持ち帰り弁当や惣菜などの中食産業は、高齢者人口の増加、単身世帯の増加、女性の就業率の上昇などの要因により需要は堅調です。コロナ禍では人との接触が抑制されるため、外食産業ほどの落ち込みはなく、直近(令和5年)では10.9827兆円とコロナ禍直前(令和1年)の10.32兆円を上回り、外食産業と比較するとその堅調ぶりが目立ちます(画像参照)。
また惣菜市場をさらに業態別にみてみると、直近(令和5年)ではコンビニ3.4631兆円(31.5%)>食料品スーパー3.2586兆円(29.7%)>そう菜専門店2.9426兆円(26.8%)>総合スーパー0.9754兆円(8.9%)>百貨店0.3431兆円の順番となっています。惣菜市場自体は堅調に拡大していますが、業態別に過去20年を振り返ると、コンビニ(26.9%↗31.5%)や食品スーパー(21.2%↗29.7%)と大きく伸長したのに対し、そう菜専門店(33.3%↘26.8%)、百貨店(6.5%↘3.1%)、総合スーパー(12.1%↘8.9%)などはシェアを落とし、時代の流れを感じます(画像参照)。
一般に中食と外食とは代替関係になる場合が多いとされています。つまり外食の代わりに惣菜を買ってかえろうかとか、惣菜を買おうと思ったが面倒なので外食で済ませようか、といった感じです。ただコロナ禍からの回復ぶりは、前述のとおり外食産業はまだコロナ禍前の水準に戻っていないのに対し、中食産業は過去最高となっています。
「食の外部化率=(外食費+中食費)/食費全体」、そして「外食率=外食費/食費全体」としたときに、両者の推移が次のグラフです。コロナ禍で両者とも激減しているのは当然ですが、コロナ禍までの推移を比較すると、外部化率はほぼ同水準を保っているのに対し、外食率は右肩下がりで減少していることがわかります。つまり中食は伸び、外食は減少していることになります。最近は様々な外食チェーン店が全国展開しているので、外食産業は成長産業だと思いがちですが、実際はそうではなく中小零細が淘汰されつつ大手による寡占化進行中のようです。