2014年3月のお知らせ
2月のある朝、出勤を控えた同僚たちを心配しました。朝、あたり一面「白い世界」です。香川県ではめずらしく、前日から雪が降り続いていました。ふんわりと積もった雪の中に、小さな足跡を見つけました。わんちゃんの足跡です。
先日、NHKの日曜美術館の番組にて、丸亀市の猪熊弦一郎美術館が紹介されました。JR丸亀駅を下車すると猪熊弦一郎美術館の巨大な壁画が目にとびこんできます。白色を背景に、黒色でシンプルに描かれたた壁画です。鯨にタイヤがついていたり、馬の後ろ姿が描かれたり・・。なぜか、「ほっ」とすると同時に、思わず微笑んでしまいます。壁画の前に幼稚園を思い出させる「黄色のオブジェ」と大きな「かたつむり(?)」。ガリバーの国に来たかのような錯覚に陥ります。猪熊弦一郎(1902-1993)は高松市に生まれ、東京美術学校に入学するまで丸亀市で過ごしました。
猪熊弦一郎の名前を知らなくても、すべての人々は「猪熊の作品」を見たことがありますよ! 三越デパートの「華ひらく」と題された「ピンク色と白色」の包装紙。猪熊弦一郎のデザインによります。1951年、クリスマス商品のためにデザインを依頼されました。千葉の海岸で拾った「石」が、デザインのヒントになったそうです。友人が「この包装紙のデザインの優れている点は、どんな形の箱を包みこんでも、デザインの印象が変わらない」と話してくれました。なるほど・・。半世紀以上経た現在でも、「華ひらく」の包装紙は、「温かさと斬新」な雰囲気を呈しています。ちなみに、依頼したデザインを受け取りに行った方は、当時三越社員だった漫画家の「やなせたかし」さんだそうです。アンパンマンの生みの親です。
東京、上野駅正面改札口にて、猪熊の絵画を見ることができます。1951年、戦後間もない時代に「上野駅に絵画を描いてくれませんか」という依頼をうけました。上野駅は北へ向かう玄関口、そして職を求めて多くの人々が行き交いました。「戦争で傷ついた人々を慰めたい」という想いで描かれたそうです。駅舎の屋根の三角部分に描かれている大きな絵画の題名は「自由」。背景の色彩は少し、くすんだ草木色。馬に乗った人・戯れる犬・傘をさしている人・・。素朴な色彩で、時間に追われる日常生活のなかで見逃しそうな空間です。でも、絶え間ない力強さが伝わってきます。当時、絵画の依頼を提案された方は「どなた」でしょう!?経済的に困難な時代の中で、明るい将来を見据え、日常生活の中に絵画に取り入れる。度量の深さに、改めて感服します。
丸亀市の猪熊弦一郎美術館で一番好きなものは、猪熊が日常生活のなかで集めた「小物」たちです。たとえば、飲み薬のカプセル・針金で作った小物・卵入れのケース・人形・毎日使っていたもの・・。誰もが、捨ててしまいそうな「もの」に手を加え、「アート」に変えてしまいます。眺めていると、自然と顔が微笑んできます。そして猪熊弦一郎の「優しいお人柄」が伝わってきます。「とりとめもない日常生活の中から美を見つけましょう。何かを探してみましょう」とメッセージを投げかけています。フランスでは「生活のアート(美)」という表現があるそうです。日常生活はアートであり、奥さまたちは皆、芸術家であり、芸術作品は日常を楽しくさせる・・という考えです。画家ジョルジュ・ブラックの描いたポスターに、書かれた言葉です。「時の流れとともに、人生とアート(美)はひとつになる」。猪熊弦一郎の想いと重なりました。
3月のお休みは、21日(春分の日)・29日(土曜日)そして日曜日です。
ソチ冬季オリンピックを見ながら、勇気づけられました。どんな種目が印象に残りましたか!? 春の季節が待ち遠しいですね。おからだ、大切になさってください。