2017年6月のお知らせ
祝日が続いた皐月。ゆっくりと過ごせましたでしょうか。大正生まれの叔母は、祝日に「日の丸」の旗を家の軒先に飾っていました。最近はこういう光景を見かけなくなり、(笑われるかもしれませんが・・)なにかしら寂しい気持ちにもなります。
会社の位置する「高屋町」自治会の班長さんから「回覧板」が届きました。「5月2日午後7時半より春日神社にて、宵神楽 岩戸の舞を奉納します」「5月3日 春祭り 御神輿のおさがり、御旅所祭り、獅子舞の奉納、餅投げやお菓子投げを行ないます」。地元の人たちはこの神社を「かすがさん」と呼んでいます。私自身、子ども心に、「かすがさんの餅投げに行く~」と言っていたことを覚えています。仕事を終え、心は春日神社へと急ぎます。
月の明かりに照らされた夜道、春の空気は優しく流れてきます。神社では町内の自治会の方たちが10人ほど集まり、笛と太鼓が録音されたCDと一緒に、シンバルを小さくした「鐘」を奏でます。オレンジ色の裸電球と焚き火の灯りの中で、中学生の巫女さんが舞を奉納しています。「ドンドン・・ドド・・ドンドン」と素朴なリズムですが、(どういう訳か)心魅かれます。パワーのような「もの」が、「古」から湧き上がってくるような感じがします。
ラジオで聴いた、小説家の小野正嗣さんのお話が興味深かったです。フランスに留学していた頃、毎夕方、ラジオから流れるクラシックの音楽番組を楽しみに帰宅し、お家の方と番組について語り合う時間は貴重な「ひととき」でした。誰もが、その時に聴いた音楽と、その時の情景が心の中で交差しています。小野さんは「僕の音楽の原点は、故郷の大分で育ったときに聴いたお神楽です」と言われたことは新鮮でした。小学生の頃、友人たちと神楽の「舞い手」をしていたそうです。
周囲が樹木に囲まれた春日神社は小さな神社です。アニメ映画「となりのトトロ」の中で、主人公の姉妹「サツキ」と「メイ」が森の中にあるバス停で、父の帰りを待っている光景を連想します。雨降りの中、「サツキ」が「トトロ」に傘を貸すと、お礼に木の実を渡す情景です。午後4時、御神輿が神社にもどり、奴行列・獅子舞が披露されました。アイスクリームの屋台も出ています(感激しました)。
ふと視線を横に向けると、ワン君もお祭りに来ています。高校生の田中君は愛犬のマロンに、アイスクリームをあげています。「近くに住んでいるのですか?」「うん、すぐ近く・・。去年も餅投げにきたんや」。スーパーのレジ袋を用意しています。何も知らない私たちに、「レジ袋があったほうが、ええで・・」と袋をくれました。彼は、他の人たちのためにもレジ袋を用意していたようです。
さぁ~餅投げが始まります。高さ5mほどの設置された「台」の前方に子供たちが集まり、張られた綱を境に大人たちは後方に集まります。神主さま・自治会の方たちが木札やお菓子を投げます。投げられる度に歓声が上がります。「こっち~ こっちこっち・・」。小さな子供が、お母さんに手を引かれながら、(餅投げの)台に上っています。うっすらとした記憶ですが、幼い頃、私も台から餅投げをしたことを思い出しました。私が気付かないうちに、半世紀以上の間、小さな町の伝統は受け継がれていました。
餅投げのあと、田中君は私たちが何も拾っていない事がわかると、彼の袋からお菓子を分けてくれました。後日、こんな話を自治会の方に話しました。「そう・・そうなんですよ。町のお祭りの醍醐味や大切さは、ここにあるんですよ。30代の頃は町の伝統行事の大切さはわからんかったけれど、今はその意味がわかります」。田中君とマロンのおかげで、心温まる一日になりました。
6月のお休みは、17日(土曜日)そして日曜日です。
「蛍袋」という花を知っていますか? 袋の形をした釣り鐘状の花が咲きます。子どもたちが「蛍」を追いかけ、この花の中に入れたことから、蛍袋の名前が付けられました。素敵ですね。おからだ、大切になさってください。