2018年4月のお知らせ
DVDのレンタルのお店が増えて以来、好きな時間に好きな映画を、家で楽しむことができます。映画館には足を運ばれますか・・? 香川県には二つのタイプの映画館があります。常時、10本近くの映画を上映する複合型の映画館と、3本ほどの映画を2週間ごとに上映する小さな映画館があります。高松市には、ソレイユ(soleil フランス語で太陽の意味だそうです)という小さな映画館があり、去年の春、ドキュメンタリー映画「人生フルーツ」が上映されました。驚きました・・。
(失礼ですが)普段、数人ほどのお客様なのに、その日はほぼ満席でした。愛知県春日井市に住まわれている津端修一(90歳)さんと英子(87歳)さんご夫妻の日常生活が、2年間にわたり紹介されています。数年前、ききがたり「ときをためる暮らし」という本の表紙に掲載されているご夫妻の素敵な表情に魅かれたのが、津端ご夫妻の存在を知る「きっかけ」でした。
1960年代、日本は高度成長期の波に包まれていました。1964年、東京オリンピックが開催され、1968年、日本はGDP(景気の指標となる国民総生産)世界第2位を達成しました。日本住宅公団に勤務され、建築家である津端修一さんは都市計画に携わっていました。修一さんの構想は、風の通り道となる雑木林を残し、自然との共生を目的とした「団地」でした。しかし、高度成長期が求めた団地は、修一さんの構想とは異なる、無機質な「大規模団地」でした。そして、修一さんは、それまでの仕事に距離を置くようになります。
1975年、自らの土地を買い、家を建て、雑木林を育て始めました。ドキュメンタリーは、樹木希林さんのナレーションから始まります。「風が吹けば、枯れ葉が落ちる。枯れ葉が落ちれば、土が肥える。土が肥えれば、果実が実る。コツコツ、ゆっくり・・」。70種類の季節の野菜、50種類の果物を栽培する光景は楽しそうです。例えば、小さな「木札」に黄色のペンキを塗り、「踏んではいけませんよ」「小鳥の水場です。どうぞ!」「2015年、干し柿ができます」とメッセージが添えられています。
印象深かったのは、ご夫妻の朝食時間です。修一さんは「お米の和食」。英子さんは「ブルーベリー・ジャムが添えられたトースト」。お互いの好みを尊重する姿です。そして、今も指でダイヤルを回す、黒い電話機が活躍しています。高齢化社会をむかえて、ニュース番組は「年を重ねることは、マイナスな印象」を伝えることが多い現在。伏原監督は、「年を重ねるとともに、柔らかいファンタジーのような物語」を作りたかったそうです。
実は、監督が津端ご夫妻にドキュメンタリー作成のお願いをした時、ご夫妻からの返事は「テレビの取材はお断りです」でした。そして、電話連絡、手紙を書き、4通目の手紙を書いたときに、返事が届きました。葉書の隅に、小さな字で「よろしく」と書かれてありました。映画を見終わったあと、穏やかな空気が、ゆっくりと私の心の中に流れていました。今年の春、高松のコミュニティー・センターにて、「人生フルーツ」の上映会の知らせを見ました。津端ご夫妻の想いは、ゆっくりと、静かに、たくさんの人たちの中に浸透しつつあるようです。
4月のお休みは、21日(土曜日)・30日(昭和の日の振替休日)そして日曜日です。
先日、ソレイユ映画館の詫間社長が新聞に紹介されていました。戦後まもなく映画館を始めましたが、テレビやビデオの普及により、映画館に足を運ぶ人々が少なくなりました。しかし、「まちの映画館の灯を消してはならない」という社長の思いが、ソレイユ映画館を支えているという記事です。「映画がヒットしなくても、お客さんがいい映画でした・・と声をかけてくれるのが励みになります」とのお言葉。映画館で見る映画は、より大きな感動を私たちに与えてくれることに気づきました。おからだ、大切になさってください。