小麦のおいしい部位

小麦粉は、放置しておくと虫がつきます。
開封して空気が触れるようになるとその発生率は高くなり、梅雨から秋口にかけての高温多湿の季節は虫にとっては絶好の生息条件になります。小麦粉に発生する害虫は、一般には無害ですが実際に見るとあまり良いものではありません。

「虫がついたり、カビが生えたりするのは、防虫処理や防かび処理をしてない証です」という屁理屈というか一般論は、現在ではなかなか支持されません。現在の食品は、安全・安心で、尚かつ虫はつかない、カビは生えないという、一見矛盾とも思えるような厳しい条件を満たしている必要があります。

製粉前の小麦は表皮という殻に被われているので、小麦粉に比べると害虫が発生する頻度は、低くなりますが、それでも条件が揃えば発生します。そのため小麦の状態で長期に亘り保管するときは、燻蒸作業が必要になります。燻蒸という言葉を聞いただけでアレルギーを起こす方もいますが、現在のように大量の小麦を処理する場合は、国産小麦、外国産小麦を問わず、そのような作業が必要になってきます。

では燻蒸作業をしないとどうなるかといえば、コクヌストモドキに代表されるような穀物害虫がやってきて、小麦を食べてしまいます。実際には画像のような無惨な状態になってしまいます。これを見ると、虫は皮よりも中の胚乳の方が好きだということがわかります。だって外側の殻だけ残って、中はきれいに空洞になっているからです。虫は正直なのでおいしいところしか食べません。だから中心部分の方が美味しいのに違いありません。

胚乳部分が食べられた小麦胚乳部分が食べられた小麦

胚乳部分が食べられた小麦

虫がそうなら人間も同じです。うどんについて言うと、極端に中心部分だけ取り分けることについては若干異論があるものの、一般的傾向としてはグレードの高い小麦粉の方が、うどんの評価は高くなります。表皮部分が少し混じった2等粉で作ると色がくすんで、喉ごしもざらざら、ちょっとべとついて、コシもキレも良くありません。その点1等粉で打つと、つるつる、しこしこ、コシはあって、喉ごし良好、また見た目も淡黄色で見るからに食欲をそそります。1等粉と2等粉で同じようにつくったうどんを、そのまま黙って試食してもらうと、100人が100人とも1等粉で作ったうどんを選びます。