#033 武蔵野うどん

武蔵野とはだいたい埼玉県川越より南で、府中市までの間に拡がる地域、簡単にいうと東京の北西部分を指します。そしてこのあたりで受け継がれているうどんを「武蔵野うどん」というそうです。

武蔵野うどんの特徴を思いつくままに挙げると、大体つぎのような感じ:

基本的には冬も夏も、つまり年がら年中、「ざるうどん」形式で食べるけど、その内容はさぬきのざるとはかなり違う(詳細は後述)。

うどんは、かなり色がついている。デジカメでみてもかなりグレーだとわかるので、さぬきで流通しているうどん用小麦粉よりもかなり黒いものをつかっている感じ(専門用語でいうと灰分の高い小麦粉)。

うどんはずっしりと重く、噛みごたえがあり、そして小麦粉のうまみがする。冬にざるだと「ちょっと寒いかな」と思ったけれど、そんなに冷たくは締めてないので、丁度いい塩梅。

うどんより更に特徴的なのは、つけ汁。ほうれんそうを茹でたもの、白ネギ、豚肉などがお皿に盛り付けられていて、これを糧もり(かてもり)と言い、つけ汁の具になります。

考え方としては、うどんが「飯」で、糧とよばれる「具」がおかずになり、全体で定食のようなバランスのとれた食事になります。ここで、なんで糧が主食に相当するうどんではなく、おかずの方を指すのかは不明です。また、お肉は、牛肉などではなく必ず豚肉を使用するそうです。

つゆは温かく、うどんはぬるいので、食べ始めはつゆが勝り、どちらかというと温かいうどん。そして食べるにつれ、つゆも段々とぬるくなってきて、うどんのしっかり感が強く押してくるようになる。どちらも美味しいので、一度で二度おいしい感じ。
さぬきうどんは、うどんを食べるのが目的みたいなところがあるけど、武蔵野うどんはどちらかというと、ちゃんとした食事をしているような雰囲気がします。武蔵野うどんを食べてみて、改めてうどんの基本を、ふたつ思い直しました。

(1) 注文を聞いてから、ゆでるので、ゆで立てのうどんしかでてこない。当然、その間待つことになるけど、それ以上においしいうどんが食べられる。これはパブロフのわんちゃん状態だからではなくて、本当においしいうどんだからです。今のさぬきでは、客は待つことに慣れてないし、お店も多くの客をこなすために、必ずしもゆで立てにあたらないこともある。早い話、伸びたうどんにあたることもあります。

(2) おいしいうどんは、重い軽い、白い黒い、太い細いに関係なく、小麦粉の甘味がする。いくら出汁を上手にとっても、またてんぷらが美味しくても、うどんそのものに甘味がないと、食べていて飽きてきます(と感じるのは私だけ?)。コシも大事ですけど、食品の根本はやはり味であると思います。

写真は、2月25日に食べた練馬区石神井「エン座」の武蔵野うどん。西武新宿線・上石神井駅より徒歩15分。遠い学生時代に、住んでいたことがありますが、今は駅前のバスのロータリーがかろうじて当時の面影を残すのみ。すっかり浦島太郎になって帰ってきました。